彦人大兄命

彦人大兄命（ひこひとおおえのみこと）は、古墳時代に生きた皇族です。

『日本書紀』においては、彦人大兄と記され、敬称は付されていません。同書によれば、仲哀天皇の叔父にあたり、天皇はその娘である大中姫を妃としたとされています。しかし、これ以上の詳細な記述はありません。

一方、『古事記』では、日子人大兄王と表記され、景行天皇の皇子であると記されています。母は伊那毘若郎女（若建吉備津日子の女）であり、同母兄に真若王がいたとされます。ただし、真若王に関する妻子の記述はありません。

また、『古事記』には大江王（大枝王とも表記）という人物が登場します。大江王の母は迦具漏比売とされています。迦具漏比売は大江王の異母兄である倭建命の曾孫にあたるため、景行天皇が直系の卑属を娶ったことになります。景行天皇の寿命を考慮すると、年齢的に無理があるため、この系譜を誤記とみなし、彦人大兄命と大江王を同一人物とする説が存在します。

ただし、『古事記』には迦具漏比売という名の別の女性（あるいは同一人物）が登場し、応神天皇の妃となっています。しかし、この迦具漏比売が生んだとされる子のリストは、大江王の母である迦具漏比売が生んだとされる子とは異なっています。さらに、大江王は異母妹である銀王（しろがねのみこ）を娶り、大名方王と大中比売命（大江王の甥である仲哀天皇の妃）を儲けたとされています。彦人大兄命が儲けた子と一部一致することから、同一人物説を補強する根拠ともなっています。

彦人大兄命の系譜については、複数の説が存在し、確定的なことは言えません。しかし、これらの記述から、彦人大兄命が古墳時代の皇室において重要な役割を果たしていたことが推測できます。

なお、飛鳥時代の皇族に押坂彦人大兄皇子がいますが、彼は彦人大兄命とは別人です。

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