待合

待合の歴史とその役割

待合（まちあい）は、主に待ち合わせや会合のために貸し出される座敷で、特に東京においては芸妓との遊興を目的として利用されました。この業態は、京都の「お茶屋」に相当し、かつて社会の中における独特の位置を占めていました。

歴史的背景

待合の起源は江戸時代に遡ります。当時は男女の密会場所として「出合茶屋」が存在し、多くの女性たちが利用しました。江戸時代後期には、新橋近くに「信楽」と呼ばれる待合茶屋が開業し、その名の通り待合の概念が確立されました。1873年、待合茶屋として初めての営業を行ったのが「浜の屋」であり、これが待合茶屋の始まりとされています。その後、新橋を中心に急速に数が増加し、1890年代には多くの企業や政治家の接待場として人気を誇るようになりました。

経済的役割

待合の営業には警察の許可が必要で、特定の区域でのみ営業が認められました。待合と料亭の主な違いは、料理を直接提供しない点です。料理は仕出し屋からの取り寄せであり、待合は入店料と手数料を取ることで収入を得ていました。このため、待合は気軽に飲食を楽しむ場所となり、社会的な交渉の場にもなりました。特に、芸妓は秘密を守るため、企業の機密情報を含む密談にも頻繁に利用されました。

待合の文化

待合はその社交的な性質から、多種多様な店舗形態を持ちました。格式ある待合もあれば、比較的安価で利用できる小待合も存在したため、出入りする客層も異なりました。高級な待合では「一見さんお断り」が常であったのに対し、安待合では気軽に楽しむことができました。この文化は、著名な文人たちによっても描かれ、作品の中にはその様子が生々しく再現されています。

待合政治とその影響

待合は政治の場としても重要でした。維新から昭和期にかけて、政治家は待合で会合を開き、酒を酌み交わしながら政策についての重要な決定を行っていました。この「待合政治」は、時に批判の的となり、「密室政治」としてマスコミに取り上げられることもあったのです。しかし、こうした場の特殊性は時代と共に変化し、待合の数は減少していきました。

戦後の変化

1941年の戦争による営業停止を受けた後、1945年に営業が再開され、待合は「料亭」として新たな形態を持つこととなります。政治家との接触や企業接待の場はそのままに、次第に多様化した接待文化に影響され、従来の訪問スタイルが変わっていくことになります。やがては、芸妓の数も減少し、かつてのような待合の繁栄は見られなくなりました。現在では、その名残を感じる場所も存在していますが、待合の特異な文化は失われつつあります。

待合は社会の変遷とともに変貌してきた重要な文化の一端であり、長い間、特定の社交の場として機能してきました。

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