後鼻神経切断術

後鼻神経切断術（こうびしんけいせつだんじゅつ）とは

後鼻神経切断術は、主に鼻アレルギーの症状、特に鼻漏を改善することを目的とした手術です。この手術は、鼻の奥に位置する後鼻神経を切断することによって、くしゃみや鼻水といった不快な症状を緩和します。これは、分泌神経と知覚神経を含む後鼻神経が、鼻水の80%とくしゃみの3〜5%に関与しているためです。

手術の概要

後鼻神経は蝶口蓋孔から鼻腔に入る重要な経路であり、アレルギー性鼻炎や温度変化に伴う鼻過敏症などでは過敏に反応し、さまざまな症状を引き起こします。過去には歯茎を切開して行う方法が用いられましたが、大きな手術のリスクや回復に時間がかかるため、次第にこの方法は減少しました。

2000年以降、超音波凝固装置を用いて蝶口蓋孔から鼻腔に入った後鼻神経を切断する新しい手術法が開発されました。この方法では、重症のアレルギー性鼻炎に効果があり、実施した患者の約90%が良好な結果を得ています。さらに、手術から3年以上経過した後でも、8割から9割の患者において効果が持続することが確認されています。

根治性の確保

手術後、神経をそのまま切断するだけでは再発のリスクが高まるため、鼻腔内の軟骨を使用した防御措置を行います。これにより、手術後の再発の可能性が著しく低下し、根治的な効果が期待できます。さらに、鼻中隔矯正術や粘膜下の下甲介骨切除術を併行することで、患者は薬物療法に頼ることなく快適な日常生活を送ることができるようになるのです。特に通年性アレルギーの場合には、経済面でも大きなメリットがあります。

安全性と手術の副作用

手術は全身麻酔下でおよそ2時間ほどで行われ、一般には2泊3日の入院が推奨されますが、施設によってはより短期間の入院が可能な場合もあります。手術後には、若干の鼻出血のリスクがありますので、1ヶ月ほどは注意が必要です。最近では、局所麻酔下で日帰り手術を取り入れる施設も増えてきています。しかし、国際的にこの治療法の有用性に関しては、いまだに充分なエビデンスがないため評価が難しい状況にあります。

また、患者の中には術後に「空の鼻症候群」と呼ばれる状態を経験することがあり、その場合には快適さを損なうことがあります。そのため、適応を慎重に評価した上で手術を実施することが求められています。

費用について

日本における後鼻神経切断術の費用は、入院費を含めて約20万円程度です。健康保険が適用されるため、高額療養費制度を利用することで、所得によりますが実際の自己負担額は10万円を下回ることが多いです。また、保険会社の手術給付金が利用できる場合もあります。

このように、後鼻神経切断術は鼻アレルギー、特に重症の患者において有効な治療法ですが、手術に関する慎重な評価と選択が求められます。

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