得能佳吉

得能佳吉：官僚から実業家へ、そして教育者へ

得能佳吉（とくのう かきち、1884年4月3日 - 1964年6月19日）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の内務官僚、実業家、そして教育者です。富山県に生まれ、東京帝国大学法科大学を卒業後、1909年に文官高等試験行政科試験に合格し、内務省に入省しました。

内務省入省後は、警視庁警部としてキャリアをスタートさせます。その後、岡山県試補、警視庁警視、山形県警察部長、滋賀県警察部長など、着実にキャリアを重ねていきました。さらに、台湾総督府警視兼同府警察官及び司獄官練習所長、拓殖局書記官、内務書記官、北海道庁書記官・内務部長と、要職を歴任しました。

1925年9月、得能佳吉は岩手県知事に就任します。知事在任中は、公平無私な県政運営に尽力し、地域の発展に大きく貢献しました。具体的には、和賀妻堰や中央耕地の整備、公会堂の建築、農学校の移転など、数々の事業を推進しました。しかし、1928年1月10日、農学校の敷地問題を巡り、知事を休職。同年1月31日には退官することとなります。

官界を去った後、得能佳吉は実業界へと転身します。臨港倉庫株式会社の代表取締役や横浜桟橋倉庫株式会社の専務取締役など、企業経営の分野で手腕を発揮しました。さらに、教育にも貢献し、東京植民貿易語学校、東京保善商業学校、東京保善工業学校の校長を歴任しました。

得能佳吉の生涯は、内務官僚としての華々しいキャリアから、実業界での成功、そして教育者としての活動へと、多岐にわたる活躍を見せています。公平な県政運営で知られた岩手県知事としての功績、そして企業経営や教育への貢献は、今日の日本社会にも少なからず影響を与えていると言えるでしょう。彼の功績は、単なる行政官や実業家の枠を超え、時代を担ったリーダーとしての大きな足跡を残しました。

彼の経歴から、日本の近代化における官僚組織の役割、地方行政のあり方、そして近代日本の経済発展や教育制度の変遷を垣間見ることができます。得能佳吉が残した記録は、歴史研究において重要な資料として、今後も活用されることでしょう。彼の生涯は、現代社会を生きる私たちにとって、多くの示唆を与えてくれる貴重なものです。

参考文献

歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年
人事興信所編『人事興信録』第11版 下、1937年
統計資料協会編『文化事績録 B巻』統計資料協会、1934年

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