御法

『源氏物語』第四十帖「御法」：紫の上の最期と源氏の悲しみ

「御法」は、『源氏物語』五十四帖中、第四十帖にあたる巻名です。物語の中心人物である光源氏と、彼を深く愛する紫の上が、人生の終焉を迎える場面を描いた、重要な章となっています。巻名は、紫の上が花散里に詠んだ歌「絶えぬべき御法ながらぞ頼まるる世々にと結ぶ中の契りを」に由来しています。この歌は、永遠の愛を誓う歌であり、紫の上と光源氏の深い愛情の象徴と言えるでしょう。

あらすじ：

物語は、光源氏51歳の春、3月から8月までの出来事を描いています。かねてより病弱であった紫の上は、容態を崩し、しきりに出家を望んでいました。しかし、光源氏はそれを許そうとはしません。

3月10日、紫の上は二条院にて盛大な法華経千部の供養を行います。明石の御方や花散里といった、紫の上が深く関わりのあった人々も参列し、別れを惜しむ様子が描かれています。この供養は、紫の上にとって最後の晴れ舞台となり、自身の死を予感させるものとなっています。

夏になると、紫の容態はさらに悪化します。明石の中宮も養母である紫の上の見舞いに訪れ、家族や親族の深い愛情が感じられます。紫の上は、可愛がっていた孫の三の宮に、庭の桜を代わりに愛で、時折仏に供えるようにと、遺言めいた言葉を遺します。これは、紫の上の深い愛情と、死への覚悟を示す象徴的な場面と言えるでしょう。

秋の夕暮れ、風の強い日、明石の中宮が紫の上の病床を訪れます。光源氏も加わり、歌を詠み交わすなど、最期のひとときを大切な人々と共に過ごします。しかし、その直後、紫の上は容態を崩し、明石の中宮の手を握ったまま、静かに息を引き取ります。その様子は、露のように儚く、美しく描かれています。

紫の上が亡くなったのは8月14日です。その日のうちに荼毘に付され、翌15日には葬儀が執り行われました。帝や大臣など多くの人々が弔問に訪れ、紫の上の死を悼みました。光源氏は深い悲しみに暮れ、世間体を気にして出家の気持ちを抑えながら、日々を過ごします。

「御法」の解釈：

「御法」は、単なる紫の上の死を記述するだけでなく、光源氏の深い悲しみ、そして人生における無常観を浮き彫りにしています。紫の上は、光源氏にとってかけがえのない存在であり、彼女の死は光源氏に大きな衝撃を与えます。同時に、この巻は、光源氏のこれまでの生き方、そしてこれからの人生を問いかける、重要な転換点となっています。紫の上の死は、光源氏だけでなく、物語全体に大きな影を落とす出来事であり、物語の後半へと進む大きな転換点となるのです。

関連情報：

渋谷栄一による定家本の本文・現代語訳
『源氏物語　41 御法』：新字新仮名 - 青空文庫（与謝野晶子訳）

これらの資料を参照することで、「御法」のより深い理解へとつながるでしょう。特に、現代語訳を読むことで、当時の言葉や文化背景を理解しやすくなります。また、定家本を原文で読むことで、作者の意図をより深く読み解くことができるでしょう。

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