復讐の女神 (小説)

『復讐の女神』

『復讐の女神』（原題: Nemesis）は、アガサ・クリスティが1971年に発表したミス・マープルシリーズの第11作目にあたる推理小説です。クリスティ自身にとって、この長編作品の執筆時期は特に意義深く、以後の作品には繋がらない重要な位置を占めています。本作では、前作『カリブ海の秘密』に登場した大富豪ジェースン・ラフィールが中心となり、彼の死とともに新たな事件が幕を開けます。

あらすじ

物語は、ミス・マープルの元に一通の手紙が届くところから始まります。その内容は、以前に遭遇した殺人事件の解決を依頼するもので、私たち読者は再びマープルの推理力が試されることになります。依頼主である弁護士は、ジェースン・ラフィールが遺した遺言の中で、未解決の犯罪を調査するよう指名されたと伝えます。さらに、もし彼女が解決に成功した場合、金銭的報酬として2万ポンドを受け取ることができるというのです。

ただし、ラフィールが残した手がかりは非常に限られており、マープルは困難な状況に直面します。彼女はまず、ラフィールが故郷の名所を巡るツアーに参加することから調査を始めます。仲間には、引退した校長であるエリザベス・テンプルや、ツアー客のミス・クックなどの多くの人物が含まれています。テンプルは、ラフィールの息子マイケルと何らかの関係があったことを示唆し、物語はさらに複雑さを増していきます。

ツアー中、マープルはラフィールが生前に手紙を送った三姉妹、ラヴィニア、クロチルド、アンシアとも交流を持ちます。ここで、姉妹の家に訪れることで次の手がかりを掴みますが、同時に彼女たちの関わりも明らかとなり、さらに事件は深刻な方向へ進んで行きます。特に、屋敷に隠されたヴェリティというキャラクターの過去が、物語の核をなすことになります。

また、ツアーの参加者たちや彼らの背景も重要な要素となり、それぞれの思惑や人間関係がミス・マープルの調査をより困難にします。特に、心理学者であるワンステッド教授は重要な情報提供者として登場し、彼がマイケルを診察した結果、彼に対する疑惑を解く手助けをします。しかし、様々な証拠が次々と挙がり、思わぬ方向へと物語は進展していきます。

物語が進むにつれ、マープルはテンプルの突然の入院から始まり、未解決の死に関連するさまざまな事件を解決に導いていきます。彼女の推理は連想や直感との組み合わせで成り立っており、読者に強い興味を引き続けます。ついに、重要な情報が彼女の元に集結し、隠されていた真実が明らかになる瞬間が訪れます。

最終的に、マープルは一連の事件を解決し、マイケルの無実を証明する過程で、彼女に課された課題を見事に達成します。

登場人物

この作品には、ミス・マープルを中心に多彩な登場人物が存在しており、各キャラクターのバックストーリーが物語をさらに魅力的にしています。特に、謎めいた過去を持つ三姉妹や、事件を取り巻く人々との関係性が、不気味ながらも興味をそそります。

映像化

この作品は、1987年と2009年の二度にわたりテレビドラマとしても制作され、多くのファンに支持されています。映像化された作品では、原作のエッセンスを保ちながら、独自の視点や解釈を展開しています。

『復讐の女神』は、その魅力的なストーリーと深いキャラクター描写が光り、アガサ・クリスティの遺産の一部として読み継がれています。

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