循環論法

循環論法とは

循環論法とは、ある命題を証明する際に、その命題自体を前提として用いる議論のことです。また、ある用語の定義において、その用語自体が定義の中に含まれている場合も循環論法と呼ばれます。この論法は、表面的には正当に見えるかもしれませんが、実際には何の論証も行っておらず、結論を導き出すことができません。

循環論法の種類

循環論法には、大きく分けて「証明における循環論法」と「定義における循環論法」の2種類があります。

証明における循環論法

証明における循環論法は、命題Pを証明するために、P1, P2, ..., Pnという一連の命題を用いる際に、P1を証明するためにP2を、P2を証明するためにP3を、...、Pnを証明するためにP1を用いるという形式を取ります。この場合、どの命題も絶対的な根拠を持たず、循環しているため、証明として成立しません。

定義における循環論法

定義における循環論法は、ある用語Wを定義する際に、W1, W2, ..., Wnという一連の用語を用いる際に、W1の定義にW2が、W2の定義にW3が、...、Wnの定義にW1が現れるという形式を取ります。例えば、「西とは東の反対」と定義し、「東とは西の反対」と定義する場合、東西という言葉の意味を理解するためには、どちらかの言葉の絶対的な意味を知っている必要があります。しかし、この定義だけではどちらの意味も分からず、定義として成立しません。

循環論法の例

証明における循環論法の例

「この映画は面白い。なぜなら、とても楽しめるからだ。」
「日本国憲法が最高法規であるのは、日本国憲法にそう書いてあるからだ。」

定義における循環論法の例

知識とは何か？という問いに対して、「知識とは、正当化された真なる信念である」と答えた上で、「正当化された」とは何か？と問われた際に、「証明や証拠が知られていること」と答える。
「コーランこそが真実を決定する。なぜならアラーがそう決めたからだ。なぜアラーがそう決めたとわかるのか？それはコーランに書いてあるからだ。」

循環論法が問題となる理由

循環論法は、表面上は議論や説明のように見えますが、実際には何の根拠も示していません。そのため、循環論法を用いた議論は、相手を説得することができません。また、循環論法に陥っていることに気づかないと、誤った結論を導き出してしまう可能性があります。

循環論法からの脱却

循環論法から脱却するためには、以下の点に注意する必要があります。

前提となっている事柄を明確にする。
前提が本当に正しいのかを検証する。
定義があいまいな用語を使用しない。
複数の情報源を参照し、客観的な視点を持つ。

辞書と循環論法

辞書は有限の語彙で無限の概念を説明しようとするため、完全に循環論法を避けることは困難です。しかし、循環の輪を大きくすることで、既知の事柄を多く含めることができ、有用な定義を提供することができます。

まとめ

循環論法は、論理的な思考を妨げる誤りです。循環論法の構造を理解し、日々の議論や意思決定において注意することで、より正確で説得力のある思考を身につけることができます。

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