徳田ねぎ

徳田ねぎ：岐阜の伝統野菜が紡ぐ歴史と味

岐阜県岐南町を代表する特産品、徳田ねぎ。その歴史は江戸時代後期にまで遡ります。木曽川の氾濫による砂地の土壌という、決して恵まれたとは言えない環境の中で、人々は尾張地方からネギの種を持ち帰り、栽培を始めました。やがて、この地で育まれたネギは、徳田ねぎとして独自の進化を遂げます。昭和初期には、近隣の村々でも栽培が推奨されるようになり、岐南町の農家の重要な作物として、今日まで受け継がれてきました。2002年には、岐阜県より「飛騨・美濃伝統野菜」に認定され、その価値が広く認められることとなりました。

徳田ねぎは、一般的なネギのように、白い根の部分を食べる白ネギ（下仁田ねぎなど）や、緑の葉の部分を食べる青ネギ（九条ねぎなど）とは少し異なります。どちらかといえば、両者の良い所を兼ね備えた中間型と言えるでしょう。白い根元はもちろん、鮮やかな緑色の葉も美味しく食べることができます。独特の風味と食感は、多くの食通を魅了し続けています。

その食べ方は様々です。シンプルに焼きネギとして味わうのも良いですし、煮物などにも活躍します。また、地元では、焼いたり煮たりした徳田ねぎに、八丁味噌を溶いた出汁をかける食べ方が珍重されています。味噌の深いコクとネギの甘みが絶妙に絡み合い、まさに絶品の味わいです。

徳田ねぎの栽培は、独特の技術を要します。種は伝統的に自家採種され、9月に播種。翌年4月頃に苗を移植し、7月頃に本畑へ植え替えられます。そして、11月から翌年3月にかけて収穫されます。収穫までの期間、畝を高くし、土寄せを数回行うなど、丹精込めて育てられます。この手間暇かけた栽培こそが、徳田ねぎの風味豊かな味わいを生み出す秘訣と言えるでしょう。

岐南町では、徳田ねぎを愛する人々の心が様々な形で表現されています。2006年には、町制50周年を記念して、徳田ねぎをモチーフにしたキャラクター「ねぎっちょ」が誕生しました。親しみやすい姿と、町のシンボルとして人々に愛されています。また、2007年には、夏祭りのイベントとして「N-1グランプリ」という徳田ねぎを使った創作料理コンテストが開催されるなど、地域を挙げて徳田ねぎを盛り上げる取り組みが続けられています。

現在、徳田ねぎは、岐阜県内だけでなく、愛知県などにも出荷され、多くの人々にその美味しさが届けられています。その歴史と伝統、そして人々の愛情によって育まれた徳田ねぎは、これからも岐南町の誇りとして、人々の食卓を彩り続けることでしょう。その深い味わい、そして地域に息づく文化に触れてみませんか？

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