心を繋ぐ6ペンス (映画)

『心を繋ぐ6ペンス』（原題：Half a Sixpence）は、1967年に公開された、ジョージ・シドニー監督によるイギリスミュージカル映画です。H・G・ウェルズによる1905年の自伝的小説『キップス：素朴な魂の物語』を原作とし、ビヴァリー・クロスによる同名の舞台ミュージカルを映画化した作品となっています。軽快な音楽と、心温まるストーリーで知られています。

物語は、エドワード朝時代のイングランドを舞台に、主人公アーサー・キップスを中心に展開します。キップスは貧しい仕立て職人ですが、幼馴染でメイドのアンと慎ましくも幸せな日々を送っていました。2人は子供の頃、6ペンス硬貨を半分ずつ持ち合う約束をし、将来の結婚を夢見ていました。

しかし、ある日キップスは思わぬ幸運に恵まれます。莫大な遺産を相続し、一躍金持ちになったのです。この幸運の舞い込みにより、キップスの人生は大きく変わります。彼はアンを忘れ、上流階級の令嬢ヘレン・ウォーシンガムに恋をします。華やかな社交界に足を踏み入れ、裕福な生活を送るようになります。

しかし、ヘレンの関心の的はキップスの財産であり、彼の素朴な育ちを軽蔑していました。皮肉にも、キップスとヘレンの婚約発表のパーティーがアンの奉公先で開催されます。そこで再会した2人。アンの落胆した様子、そして周囲の冷ややかな言葉に、キップスは初めて自分の浅はかさに気づきます。彼はヘレンとの婚約を破棄し、アンへの愛を再確認するのです。

こうして、キップスとアンは結婚し、幸せな家庭を築こうとしますが、新たな困難が待ち受けていました。裕福な生活に馴染めないアンは、家事を手伝ってしまい、キップスとの間にすれ違いが生じます。さらに、キップスの財産を運用していたヘレンの兄の事業が失敗し、キップスは再び貧しい生活に逆戻りする羽目になります。

絶望するキップスでしたが、アンは元の生活に戻れることを喜びます。そんな中、新たな知らせが届きます。以前キップスが投資していた劇作家チタローの舞台が成功し、莫大な配当金がキップスのもとに舞い込んだのです。このお金で、2人は小さなながらも自分たちの家を手に入れることができました。

映画は、華やかなミュージカルシーンと、社会階層の差、そして人間の心の機微を繊細に描いています。貧富の差や、社会的地位の変化によって揺れ動く人間の心の葛藤、そして、真の幸せとは何かを問いかける、感動的なストーリーが展開されます。

撮影は、イギリスの美しい風景を活かして行われました。ロイヤル・タンブリッジ・ウェルズのパンタイルズや、ブレナム宮殿、オークリー・コートなど、歴史的な建造物が数多く登場します。また、サリーのシェパートン・スタジオでの屋内撮影も重要な部分を占めています。

キャストには、トミー・スティール、ジュリア・フォスター、シリル・リチャードなど、当時の人気俳優たちが名を連ねています。特に、トミー・スティール演じるキップスのキャラクターは、観客の共感を呼びました。

『心を繋ぐ6ペンス』は、美しい音楽、華やかなダンス、そして心温まるストーリーが一体となった、忘れられないミュージカル映画です。英国アカデミー賞（BAFTA）の衣装デザイン部門にもノミネートされた、その高い芸術性も評価されています。

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