急降下爆撃

急降下爆撃（きゅうこうかばくげき）

急降下爆撃とは、航空機が急降下しつつ爆弾を投下する際の攻撃手法を指します。この技術は、特に精密爆撃が求められる小型の目標、例えば海上艦船に対して非常に効果的です。急降下爆撃のスタイルは、航空機のベクトルと爆弾の落下ベクトルが近接することから、命中精度が高い特徴があります。

理論と機構

急降下爆撃の手法が確立されるまで、爆撃は主に水平爆撃に依存していました。しかし、急降下爆撃の導入により、その命中精度が大幅に向上したため、航空戦力の新たな武器として広く受け入れられるようになりました。この技術に特化した専用の航空機も開発されました。急降下爆撃は、目標への直接的な接近を必要とするため、対空砲火への脆弱性が増す一方、その精度の改善を実現しました。

急降下爆撃では、通常500メートルから900メートルの低高度から爆弾が投下されます。これは、水平爆撃に比べて小さい高度であり、結果として運動エネルギーが低下しますが、その分急降下の速度が加速度的に増すことで、あたかも重力加速度が大きく作用します。また、この戦術では航空機の機体に大きな負荷が掛かるため、特別な空力ブレーキが必要となることがあります。

投弾方法

急降下爆撃の方法には主に二つがあります。ひとつは、先頭機が急降下攻撃を行い、続く機体がそれに従う方法です。このアプローチは、先行機が投下後の着弾状況を見て、後続機が照準を修正しやすい利点があります。しかし、全機が同じ経路を通過するため、敵の対空砲火が集中するリスクも伴います。

もう一つは、編隊全機が一斉に投下を行う方法で、投下タイミングを調整することで、目標が急激に回避行動を取った場合、全機が一斉に外れる可能性があります。ただし、この方法は敵の防空力を分散させるための利点があります。

日本海軍は、この急降下爆撃の降下角度を約50°から60°に設定しましたが、急な角度での降下は操縦者にとって操縦を難しくするため、この数値に落ち着きました。

歴史的背景

急降下爆撃は、アメリカ[[陸軍航空隊]]によって実用化され、1919年に世界初の実戦使用が記録されています。この爆撃が成功するや否や、世界中で急降下爆撃の研究が始まり、各国が専用機を開発するようになりました。アメリカでは、1934年にカーチスF6Cが急降下爆撃機へと改良され、続く1937年にはSB2Cとして完成しました。日本でも同様の努力がなされ、九四式艦上爆撃機が開発され、急降下爆撃技術が実戦に供されました。

急降下爆撃は、第二次世界大戦中に特に多用されました。日本海軍では、1942年のセイロン沖海戦において3隻のイギリス艦船を標的にし、高い命中率を示しました。米海軍もミッドウェー海戦などで急降下爆撃を駆使し、確実に敵空母を沈めました。

現代の急降下爆撃

第二次世界大戦以降、急降下爆撃の有効性はレーダー技術やミサイルの普及に伴い低下しましたが、依然としてF/A-18や特定の軽攻撃機ではこの手法が使われています。最近の局地紛争でも急降下爆撃が見られるように、歴史を通じて進化し続ける戦術であると言えます。

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