性分化疾患

性分化疾患について

性分化疾患（せいぶんかしっかん、英: disorders of sex development, DSDs）とは、染色体、生殖腺、または解剖学的に性の発達が先天的に非典型的である状態を指します。この用語は、単一の疾患ではなく、多様な疾患や症候群の総称です。アンドロゲン不応症、先天性副腎皮質過形成、ターナー症候群など、約60種類以上の疾患が含まれます。

用語の変遷と定義

従来、性分化疾患は「性分化異常症」や「性発達障害」と呼ばれていましたが、時代の変化とともに「性分化疾患」という名称が広く使われるようになりました。この用語は、2006年にシカゴで行われた国際会議で提案され、多様なステークホルダーによって合意されました。

かつて使われていた「半陰陽」や「仮性半陰陽」という用語は、患者に蔑視的な意味合いがあるとされ、新しい概念である「インターセックス」が使用されるようになりました。インターセックスは、性別の範疇を越えた多様な性の在り方を示し、当事者のアイデンティティとして重要な位置づけとなっています。

インターセックスとその権利運動

インターセックスの権利運動は1980年代後半から活発になり、当事者自身が医療側からのレッテルを取り戻そうとする活動を展開しています。北米インターセックス協会（ISNA）や「Intersex Human Rights Australia」などの団体は、性分化疾患（DSD）の用語の使用に対して批判的な立場を取ることが多いです。

医療機関における診断名の選択は、当事者の自己認識やコミュニティへの受け入れられ方にも影響を与えます。権利運動を通じて、インターセックスとして生きる権利や、当事者が自らの身体や経験をどのように語るかを尊重する姿勢が求められています。

身体的な理解

性分化疾患における身体の状態は多様で、その表れ方も様々です。半陰陽や両性具有といった状態は、「男女の性腺を持つ者」を指し、具体的には卵精巣性性分化疾患や仮性半陰陽といったものがあります。このような状態にある個人は、外見としては男性や女性の特性が現れることもあれば、その中間的な特徴を持つこともあります。

特に、仮性半陰陽の場合、外性器や内性器がどちらか一方の性の特徴を持ちながら、遺伝子的には異なる性別を持つことがあります。出生時に性別が判断しにくいケースも多く見られます。

社会的な認識

性分化疾患の当事者は、しばしば特定の性別に固定されることなく、流動的なアイデンティティを持つこともあります。このことから、性分化疾患を持つ一定数の人々は、社会において伝統的な男性・女性の枠組みに当てはまらないことを自覚するようになります。実際に、インターセックスとしての認識を持つ人々の中には男性や女性のいずれかにカテゴライズされない生活を選ぶこともあります。

法的および医療的対応

日本においては、性分化疾患に対する診断と治療に関するガイドラインが整備されています。外性器の異常が認められた場合、必要な検査を行い、適切な治療やサポートを提供することが求められます。ただし、手術や身体的な介入は、十分なインフォームド・コンセントが確保されなければならず、当事者の自立した意思を尊重する姿勢が重要視されています。

結び

性分化疾患は、身体的、心理的、社会的な側面が含まれる複雑なテーマです。その理解を深めることが、当事者にとっての尊厳ある生活の実現に繋がります。特に、教育や政策の中での包括的な視点が求められています。LGBTコミュニティの中でも、インターセックスを含む視点の重要性が強調される中、性の多様性を尊重した社会の実現を目指すことが重要です。

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