怪物 (テレビドラマ)

怪物（かいぶつ）

韓国のケーブルテレビ局JTBCで2021年2月19日から4月10日まで放送されたテレビドラマ。原題は『괴물』。地方の小さな町を舞台に、ある未解決事件の真相に迫る二人の刑事の姿を描いた骨太なサスペンス作品。

概要

過去に深い傷を抱えるベテラン刑事と、秘密裏に何かを追うエリート刑事がバディを組み、地方の町で起こる不可解な事件に挑む物語。単なる犯人追跡ではなく、登場人物たちの複雑な内面や、それぞれの抱える闇、そして人間関係の深い心理描写を通して、物語が展開していく。地方という閉鎖的な空間ならではの人間模様や、隠された真実が徐々に明らかになる過程が見る者を引きつける。精緻に練られた脚本と、俳優陣の卓越した演技力によって高い評価を獲得した。

ストーリー

舞台となるのは、韓国の架空の町「マニャン」。この町で巡査部長として勤務するイ・ドンシクは、20年前に自身の妹が巻き込まれた未解決事件の傷を今も抱えている。そんな彼の前に、ソウルからエリートコースを歩んできた警部補、ハン・ジュウォンが赴任してくる。規律を重んじるクールなジュウォンは、型破りな行動をとるドンシクに不信感を抱く。しかし、町で再び過去の事件を彷彿とさせるような出来事が発生したことから、二人は反発しあいながらも共に事件の真相を追うことになる。捜査を進めるにつれて、町の人々の間に張り巡らされた嘘や隠蔽、そして彼ら自身の知られざる過去が浮かび上がってくる。誰が「怪物」なのか、そして真実とは何かを問いかける。

主要登場人物（韓国版）

イ・ドンシク: シン・ハギュンが演じるマニャン派出所の巡査部長。過去の事件の影響で、時に危ういほどの執念を見せる。青年期はイ・ドヒョンが演じた。
ハン・ジュウォン: ヨ・ジングが演じるムンジュ警察署の警部補。父は警察庁次長というエリートだが、何か秘密を抱えてマニャンへやってくる。
ナム・サンベ: チョン・ホジンが演じるマニャン派出所所長。ドンシクたちの良き理解者。
ユ・ジェイ: チェ・ソンウンが演じる町の精肉店経営者。ドンシクと深い関わりがある人物。

他にもマニャン派出所の同僚や、町の実力者、事件関係者など、多くの個性的なキャラクターが登場し、物語に厚みを与えている。

評価と受賞歴

『怪物』は批評家からも視聴者からも絶賛され、韓国の多くの賞を受賞した。特に、韓国で最も権威あるテレビ芸術賞の一つである第57回百想芸術大賞では、テレビ部門の「ドラマ作品賞」という栄誉ある賞に輝いた。また、脚本家のキム・スジンが「ドラマ脚本賞」を受賞し、主演のシン・ハギュンが「男性最優秀演技賞」を受賞するなど、作品、脚本、演技の全てが高い評価を受けた。さらに、演出を担当したシム・ナヨン監督は、大韓民国コンテンツ大賞において文化体育観光部長官表彰を受けている。これらの受賞は、本作がジャンルドラマとしてのみならず、作品全体の完成度において傑出していたことを示している。

日本版リメイク

韓国オリジナル版の成功を受け、日本でもリメイク版が制作されることが決定している。WOWOWの「連続ドラマW」枠で、2025年7月6日から放送予定。

キャスト（日本版）

富樫浩之: 安田顕が演じる、羽多野署生活安全課の警察官。25年前の未解決事件の被害者の双子の兄という設定。
八代真人: 水上恒司が演じる、東大法学部卒のキャリア警察官僚。羽多野署に異動してくる。
松田凛子: 剛力彩芽が演じる、地元で焼肉店を経営する女性。
田所加代: 高畑淳子が演じる県議会議員。
* 八代正義: 渡部篤郎が演じる警察庁次長で、真人の父。

その他、小手伸也、橋本じゅん、光石研ら実力派俳優陣が脇を固める。

スタッフ（日本版）

原作は韓国版（制作：SLL JOONGANG、脚本：キム・スジン）。日本版の脚本は前川洋一、音楽は大間々昂と斎木達彦、監督は鈴木浩介、池澤辰也らが担当。制作プロダクションはユニオン映画。

まとめ

『怪物』は、緻密な構成と俳優陣の熱演によって、予測不能なスリルと深い人間ドラマを両立させた傑作サスペンスである。過去の事件の傷、複雑な人間関係、そして登場人物それぞれが抱える秘密が重層的に描かれ、観る者を物語世界に深く引き込む。韓国での高い評価は日本でのリメイクという形でも引き継がれようとしており、今後の展開にも注目が集まっている。

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