恋する女たち (1969年の映画)

映画『恋する女たち』解説

『恋する女たち』（Women in Love）は、1969年に公開されたイギリスの恋愛ドラマ映画です。D・H・ローレンスの1920年の同名小説を原作とし、2組の男女の愛の形を描いています。監督はケン・ラッセル、出演はアラン・ベイツ、オリヴァー・リード、グレンダ・ジャクソン、ジェニー・リンデンなどです。

ストーリー

舞台は1920年代のイングランド、ミッドランズ地方の鉱山町。ブラングウェン姉妹のアーシュラとグドルンは、結婚式でそれぞれルパート・バーキンとジェラルド・クライチという男性に惹かれます。アーシュラは教師、ルパートは視学官という立場であり、知的な会話を通じて親密になります。一方、グドルンは鉱山主の息子ジェラルドに惹かれます。物語は、彼らの複雑な恋愛関係と感情の葛藤を深く掘り下げて描いていきます。

ハウスパーティー

裕福な女性ハーマイオニー・ロディスの屋敷で行われたパーティーで、4人は再会します。そこでルパートは、ハーマイオニーの気取りに耐えかねて騒ぎを起こし、彼女に暴力を振るわれてしまいます。この出来事をきっかけに、ルパートは自身の感情と向き合うようになります。

ピクニック

クライチ家主催のピクニックで、アーシュラは歌い、グドルンは踊り、それぞれが自由な感情を爆発させます。ジェラルドはグドルンの奔放さに惹かれつつも、その行動を「ばかばかしい」と評します。アーシュラとルパートは、愛と死について語り合い、互いに愛を深めていきます。しかし、その日の終わりに、湖でローラとティビーが溺死するという悲劇が起こります。

レスリングシーン

ジェラルドとルパートは、裸でレスリングをするシーンで、男同士の絆を深めようとします。ルパートは、男性間の感情的なつながりを求めますが、ジェラルドはそれを理解できません。このシーンは、男性の同性愛的な感情を描いていると解釈され、映画史に残る重要なシーンとして語り継がれています。

結婚と破滅

アーシュラとルパートは結婚し、グドルンとジェラルドは交際を続けますが、二人の関係は次第に破綻に向かいます。グドルンは、アルプスで出会ったドイツ人彫刻家レルケに惹かれ、ジェラルドをさらに苛立たせます。嫉妬に狂ったジェラルドは、グドルンを殺そうとしますが、結局は自ら雪山で命を絶ちます。

ラストシーン

ジェラルドの死後、グドルンは冷静にドレスデンへ行くことを告げ、ルパートは友人の死を悲しみます。アーシュラは、ルパートの男性的な愛へのこだわりを理解できず、二人の間には微妙なずれが生じます。物語は、愛の多様性と複雑さを描き出し、観る者に深い問いを投げかけます。

キャスト

ルパート・バーキン: アラン・ベイツ
ジェラルド・クライチ: オリヴァー・リード
グドルン・ブラングウェン: グレンダ・ジャクソン
アーシュラ・ブラングウェン: ジェニー・リンデン
ハーマイオニー・ロディス: エレノア・ブロン
レルケ: ヴラデク・シェイバル

製作

プロデューサーのラリー・クレイマーは、原作小説に魅了され映画化権を取得し、自ら脚本を執筆しました。当初はデヴィッド・マーサーに脚本を依頼しましたが、内容が原作と大きく異なったため、自分で脚本を書き直したそうです。監督には、ケン・ラッセルが起用されました。彼は、D・H・ローレンスの作品に対する深い理解と独自の映像表現によって、映画に深みを与えました。

キャスティング

キャスティングは難航しましたが、最終的にはアラン・ベイツがルパート役、オリヴァー・リードがジェラルド役、グレンダ・ジャクソンがグドルン役、ジェニー・リンデンがアーシュラ役を演じることになりました。特に、グレンダ・ジャクソンは、この作品でアカデミー賞主演女優賞を受賞し、その演技力が高く評価されました。

撮影

撮影は、1968年9月から約16週間行われました。イングランド北部やスイスのロケーションが使用され、リアルな映像が作り出されました。特に、アラン・ベイツとオリヴァー・リードのヌード・レスリングシーンは、映画史に残る名場面として知られています。撮影中のエピソードとして、リードが撮影前に酒に酔っていたことや、ベイツとの間に奇妙な連帯感が生まれたことなどが伝えられています。

作品の評価

映画は公開当時、高い評価を受け、興行的にも成功を収めました。イギリス国内だけで製作費を回収し、全世界で450万ドルを稼ぎました。批評家からも好意的なレビューが多く、特に俳優たちの演技とケン・ラッセルの演出が高く評価されました。Rotten Tomatoesでは、83%の支持率を獲得しています。また、この映画は、第43回アカデミー賞でグレンダ・ジャクソンが主演女優賞を受賞しました。

映画の持つ意義

『恋する女たち』は、単なる恋愛映画としてだけでなく、人間の感情の複雑さや、社会的な制約、同性間の絆など、さまざまなテーマを描いた作品として、今もなお多くの人々を魅了し続けています。特に、アラン・ベイツとオリヴァー・リードのレスリングシーンは、男性の同性愛的な感情や、社会的タブーに挑戦した場面として、映画史に残る重要なシーンとして記憶されています。

この作品は、2022年10月時点でDVD/ブルーレイ化されておらず、ネット配信もされていませんが、その芸術的な価値は色褪せることなく、映画ファンに語り継がれるべき作品です。

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