恋のアドバイス

恋のアドバイス：ビートルズの隠れた名曲に迫る

1965年、ビートルズの映画『ヘルプ!4人はアイドル』と共に世界に発信された楽曲「恋のアドバイス」(原題:You're Going to Lose That Girl)。レノン＝マッカートニー名義ながら、主にジョン・レノンが作詞作曲を手掛け、一部にポール・マッカートニーが参加したこの曲は、日本でもシングルとして発売され、洋楽チャートでトップ10入りを果たす人気を博しました。

制作背景：オーストリア・アルプスでの閃き

この楽曲は、レノンが中心となって制作されましたが、マッカートニーも作曲に貢献しており、マッカートニー自身は後年、その貢献度を「60対40でジョンの曲」と評しています。興味深いのは、レノンが1965年1月のインタビューで、当時の新作アルバムのために「半分しか曲を書いていない」と語っていたこと。

しかし、その直後、レノンと妻シンシアは、プロデューサーのジョージ・マーティン夫妻と共にオーストリア・アルプスへ休暇へ。この休暇中に、レノンとマッカートニー、そしてジョージ・ハリスンは「恋のアドバイス」を含む11曲もの新曲を書き上げたのです。まさに、アルプスの自然が彼らにインスピレーションを与えたと言えるでしょう。

レコーディング：幾度にもわたる重ね録りと調整

「恋のアドバイス」のレコーディングは、1965年2月、EMIレコーディング・スタジオで行われました。2テイクの録音後、オーバーダビングを重ね、モノラルミックス、そして複数のステレオミックスが作成されました。

さらに3月には追加のオーバーダビングが行われ、エレクトリックピアノやハリスンのギターソロが一度は収録されましたが、最終的にはカット。ハリスンは新たなギターソロを録音し、リンゴ・スターはボンゴ、マッカートニーはピアノを演奏するなど、楽曲は何度も練り直され、改良されていきました。最終的なステレオミックスは、イギリス盤『ヘルプ!』とアメリカ盤『ヘルプ（四人はアイドル）』に収録されています。

使用楽器とサウンド：ソニックブルーのストラトキャスター

この楽曲で注目すべきは、レノンとハリスンが1965年のアメリカツアー中に贈られたソニックブルーのフェンダー・ストラトキャスターが使用されている点です。ハリスンはこのギターを気に入っており、続くアルバム『ラバー・ソウル』でも使用しています。このギターのサウンドは、「恋のアドバイス」の独特な雰囲気を醸し出す上で重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

リリースと評価：時代を超えた名曲としての評価

「恋のアドバイス」は1965年8月、アルバム『ヘルプ!』に収録されリリースされました。イギリス盤とアメリカ盤では収録順序が異なっています。

音楽評論家からは高い評価を受けており、「シー・ラヴズ・ユー」や当時のガールグループの楽曲に匹敵する「アドバイスソング」として称賛されています。そのコード進行は「ぎょっとするほど独創的」と評され、モータウンの影響を受けたバッキングボーカルも魅力の一つとなっています。また、ラモーンズの楽曲「キル・ザット・ガール」は「恋のアドバイス」のパロディではないかという説も存在します。

参加メンバーとカバーバージョン

ジョン・レノン：リードボーカル、リズムギター
ポール・マッカートニー：バッキングボーカル、ベース、ピアノ
ジョージ・ハリスン：バッキングボーカル、リードギター
リンゴ・スター：ドラム、ボンゴ

「恋のアドバイス」は、時代を超えて多くのアーティストにカバーされており、クライアン・シェイムスやファイブ・マン・エレクトリカル・バンドなどが、それぞれの解釈でこの曲を演奏しています。

まとめ：ビートルズの歴史に刻まれた一曲

「恋のアドバイス」は、ビートルズの楽曲の中でも、その制作過程やサウンド、そして評価において、非常に興味深い作品です。オーストリア・アルプスでの作曲、幾度にもわたるレコーディング、そしてソニックブルーのストラトキャスターの使用など、様々な要素が絡み合って生まれた名曲は、現代においても聴く者の心を掴んで離しません。ビートルズの歴史を知る上で、この楽曲は欠かせない存在と言えるでしょう。

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