恋愛準決勝戦

恋愛準決勝戦

『恋愛準決勝戦』（原題：Royal Wedding）は、1951年にアメリカで製作・公開されたミュージカル映画です。撮影自体は前年の1950年に行われました。監督はスタンリー・ドーネンが務め、主演はフレッド・アステアとジェーン・パウエル。二人は劇中でダンサーの兄妹を演じ、ロンドン公演を舞台にそれぞれの恋模様が描かれます。

概要

この作品の物語は、世界を股にかけるダンサーの兄トムと妹エレンが、ロンドンでの舞台公演中にロマンスを見つけるという筋立てです。映画の背景には、1947年に行われた後のイギリス女王エリザベス2世とエディンバラ公フィリップ（当時はマウントバッテン公爵）の結婚式という、当時のイギリス王室に対する人々の大きな関心がありました。しかし、プロットの核心部分は、主演のフレッド・アステア自身と、かつて彼のダンスパートナーであった実姉アデル・アステアの実話が色濃く反映されています。1928年、フレッドとアデルは舞台『ファニー・フェイス』の成功を収めるためロンドンに滞在しました。このロンドン滞在中、アデルは英国貴族と恋に落ちて結婚し、ショービジネスの世界から引退しました。映画における妹が舞台を降りて結婚するという展開は、まさにこの出来事をモチーフとしています。ジェーン・パウエルが演じた妹役には、当初ジューン・アリソンやジュディ・ガーランドといったスター女優の名前が候補に挙がっていたといわれています。

製作

本作はメトロ・ゴールドウィン・メイヤー（MGM）によって製作されました。プロデューサーはミュージカル映画で実績のあるアーサー・フリードが担当。脚本はアラン・ジェイ・ラーナー、音楽監督はジョニー・グリーン、作曲はバートン・レインが手掛けました。撮影は色彩豊かなテクニカラーが採用され、当時の最新技術を駆使してアステアの卓越したダンスシーンが撮影されました。特に、セット全体が回転する中で行われたダンスシーンなど、一部には特殊なトリック撮影が用いられています。美術監督はセドリック・ギボンズ、ジャック・マーティン・スミスらが名を連ねています。

様々なタイトル

オリジナルタイトルは『Royal Wedding』（ロイヤル・ウェディング）です。日本で劇場公開された際には、『恋愛準決勝戦』という邦題が付けられました。これは、劇中で二組のカップルが最終的に結ばれることに由来するとされています。しかし、この邦題は内容をイメージしにくいという意見もあり、近年ではDVDなどのソフト化の際に、原題に近い『ロイヤル・ウエディング』のタイトルが使用されるケースも見られます。興味深いのは、イギリス本国での公開タイトルが『Wedding Bells』（ウエディング・ベルズ）とされたことです。これは、原題の『Royal Wedding』がドキュメンタリー映画と間違えられる可能性があったため、それを避けるための配慮だったと言われています。

日本での公開と現状

日本では1956年に初めて一般公開されました。この時の記録によれば、『電波スパイ戰』という作品と二本立てでの同時上映でした。この映画は、製作から長い年月が経過しており、2010年時点ではアメリカ合衆国および日本国内においてパブリックドメインとなっています。そのため、多くの人が比較的容易に鑑賞できる状態にあります。

主要キャスト・スタッフ

トム：フレッド・アステア
エレン：ジェーン・パウエル
ジョン・ブリンデイル：ピーター・ローフォード
アン：サラ・チャーチル

監督：スタンリー・ドーネン
製作：アーサー・フリード
脚本：アラン・ジェイ・ラーナー
作曲：バートン・レイン
* 撮影監督：ロバート・H・プランク

受賞歴

本作は、第24回アカデミー賞において、劇中で使用された楽曲「Too Late Now」が歌曲賞にノミネートされました。作詞をアラン・ジェイ・ラーナーが、作曲をバートン・レインが担当しています。

この映画は、フレッド・アステアの類まれなダンスパフォーマンスをテクニカラーの美しい映像で捉えた、ミュージカル映画史における一編として知られています。

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