恵公 (晋)

晋の恵公：春秋時代の君主とその波乱に満ちた生涯

晋(しん)の恵公(けいこう)は、春秋時代の晋を治めた君主です。紀元前650年から紀元前637年までの在位期間は、内外の争いと権力闘争に彩られた、波乱に満ちた時代でした。この記事では、恵公の生涯と、彼が関わった出来事を詳しく見ていきましょう。

恵公の即位

恵公、[諱]]は夷吾(いご)、献公(けんこう)の三男として誕生しました。幼少期から優れた知性で知られ、太子申生(しんせい)の死後、重耳(じゅうじ)と共に次期君主の有力候補に数えられました。しかし、献公の寵妃・[[驪姫]が奚斉(けいせい)を産むと、恵公は屈邑(くつゆう)に封じられました。

紀元前652年、驪姫の陰謀によって献公暗殺の疑いをかけられた恵公は、郤芮(げきえい)の助言に従い、梁(りょう)へ亡命。梁の公女と結婚し、子供をもうけました。翌年、晋国内では奚斉、そしてその後を継いだ卓子(たくし)が相次いで暗殺されます。この混乱の中、恵公は秦の穆公(ぼくこう)の支援を得て晋へ帰国、紀元前650年に晋公の座に就きました。

権力闘争と秦との戦争

君主となった恵公は、将来の脅威となる重耳の帰国を阻止しようと刺客を送り込みました。さらに、奚斉と卓子を殺害し、自らの即位に貢献した里克(りこく)ら重臣たちも弾圧しました。恵公の治世は、こうした権力闘争によって不安定な状況が続きました。

晋国内では長引く凶作に見舞われ、恵公は紀元前647年、即位時に支援してくれた秦に食料援助を要請しました。しかし、恵公は領土割譲という約束を反故にしていました。それでも、秦の穆公は寛大な態度で援助を行い、大量の食料を晋に送りました。ところが、翌年、秦で凶作が発生すると、今度は恵公が秦への支援を拒否。さらには、秦を攻め滅ぼす好機とばかりに、紀元前645年、秦へ出兵しました。

この行動に激怒した秦の穆公は、韓原(かんげん)(現在の陝西省韓城市付近)で晋軍と激突。秦軍の圧勝に終わり、恵公は捕虜となりました。

捕虜と最期

穆公は、恵公を祖先の霊に捧げようと考えましたが、穆公の妃・穆姫(ぼくき)が恵公の姉であったため、命乞いをしました。また、晋の大臣たちも恵公の助命を懇願しました。家臣たちは恵公の処刑を進言しましたが、穆公は恵公の命を助けました。しかし、太子圉(たいしそう)を人質として取り、晋は秦に従属する形となりました。

恵公は、その後、紀元前637年10月に亡くなりました。恵公の生涯は、権力闘争、そして隣国との戦争に翻弄された、ドラマチックなものでした。彼の治世は、晋の安定には寄与しませんでしたが、春秋時代の歴史において重要な一時代を築いたことは間違いありません。

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