悪霊 (ドストエフスキー)

悪霊（あくりょう）

フョードル・ドストエフスキーの長編小説『悪霊』は、1871年から1872年にかけて雑誌『ロシア報知』に連載され、1873年に単行本として発表されました。この作品は、無政府主義、無神論、ニヒリズム、信仰、社会主義革命などのテーマを扱っており、著者の代表作として広く認識されています。また、『罪と罰』『白痴』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』と並ぶドストエフスキーの五大長編の一つであり、彼の作品の中でも特に深い思想的背景を持っています。

作品のタイトルは、プーシキンの詩と新約聖書の「ルカによる[[福音書]]」から取られています。この小説は、時代の変化によって揺れ動く個人の信念や、社会の動きに対する人間の葛藤を描写しており、ドストエフスキーの思想が色濃く反映されています。

主な登場人物

• - ニコライ・フセヴォロドヴィチ・スタヴローギンは、この作品の中心的な人物であり、特異な美しさと知力を持つニヒリストです。彼は自らの内面的矛盾に苦しみ、他の登場人物に多大な影響を与えます。
• - ピョートル・ステパノヴィチ・ヴェルホーヴェンスキーは、スタヴローギンを中心に据えた革命的な計画を立てる青年で、革命家セリェイ・ネチャーエフをモデルにしたキャラクターです。
• - キリーロフ, シャートフ, 及び ダーシャなど、多彩なキャラクターたちも重要な役割を果たし、それぞれが違った信念と背景を持っています。特にキリーロフは、「神が存在しないことを証明するためには、自らの意志を貫き自殺する必要がある」と考え、その思想を追求する姿勢が特異です。

あらすじ

物語の舞台は1869年のロシアの地方都市で、かつての自由主義者が現在の社会において何を意味するのかという問いを立てています。スタヴローギン家の老女ワルワーラと共生する知識人ステパンは、娘ダーシャとの結婚を思いつきますが、それに反発するスタヴローギンの存在が、物語を複雑にします。スタヴローギンの背後には彼の放浪する過去が色濃く影響しており、彼の間接的な行動が数人の登場人物の運命に影響を与える様子が描かれています。

数々の決闘や混乱の中で、スタヴローギンは様々な人物と関わり、時に彼らの悲劇を引き起こします。物語は彼の選択の結果としての混沌と、個々の信念が権力や運命にどう立ち向かうかをテーマにして進展し、最終的には彼の過去の影と向き合うことになります。

歴史背景と影響

この小説は、1869年に発生したネチャーエフ事件に強い影響を受けています。ネチャーエフは秘密結社を結成し、内部のスパイ容疑により殺人事件を引き起こしましたが、ドストエフスキーはこの事件を通じて、思想が持つ危険性を問う作品を生み出しました。

『悪霊』は、今日においても現代社会における思想的葛藤や個人のアイデンティティの探索に対する鋭い洞察を提供しており、文学としての地位を確立しています。また、この作品は映画化や多くの研究書も出版され、幅広い影響を与え続けています。

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