悪魔の旅団

第1特殊任務部隊：悪魔の旅団の軌跡

第二次世界大戦下、アメリカとカナダが共同で編成した精鋭コマンド部隊、第1特殊任務部隊（1st Special Service Force）。「悪魔の旅団」「黒い悪魔」といった恐るべき異名で知られる彼らの歴史は、過酷な訓練と数々の激戦で彩られています。

誕生と初期計画

部隊創設の背景には、イギリス合同作戦司令部の科学者ジェフリー・パイクの構想がありました。冬季戦での敵後方ゲリラ戦を想定した彼の「プラウ計画」は、ノルウェーやルーマニアの重要施設破壊を目的としていました。この計画は、アメリカに委託され、米陸軍参謀総長ジョージ・マーシャル大将も承認。しかし、作戦部のロバート・T・フレデリック中佐は計画の非現実性を指摘しました。

それでも、ヨーロッパ戦線進出の好機と見なされた「プラウ計画」は推進され、フレデリック中佐（後に大佐）が指揮官に任命。アメリカとカナダから精鋭兵士が集められ、1942年、モンタナ州フォート・ウィリアム・ヘンリー・ハリソンで部隊が結成されました。

過酷な訓練

急ピッチで進められた訓練は、落下傘降下、武器・爆発物取扱、小部隊戦術、体力練成から構成。スキー、ロッククライミング、寒冷地訓練も実施されました。白兵戦訓練では、元上海共同租界警察のダーモット・"パット"・オニールが、急所攻撃やナイフ格闘を指導。過酷な訓練は、隊員たちの強い連帯感を生み出しました。

装備と部隊名

特殊部隊には、スキー板、アノラック、ハーバーサックなどの特殊装備が支給されました。武器もM1941ジョンソン軽機関銃など、非標準的なものが採用。部隊章は槍の穂先を模したデザインで、アメリカとカナダの国名が記されました。

「黒い悪魔」という異名は、イタリア戦線での活躍から。あるドイツ軍の日記に「黒い悪魔が我々を取り囲む」と記されていたことが由来とされています。フレデリック大佐は、心理戦として「最悪の事態はまだこれからだ！」と記したカードを戦場に置いたと伝わっています。

戦いの記録

当初のノルウェー侵攻計画は中止となり、イタリア戦線に派遣。モンテ・ラ・ディフェンサ、モンテ・ラ・レメタネアといったドイツ軍要塞の攻略作戦で、高い戦果を挙げましたが、死傷者も多数出ました。

その後、アンツィオ橋頭堡の防衛に投入。積極的な夜間偵察で敵を翻弄し、橋頭堡の維持に貢献。ローマ解放にも参加しました。南仏侵攻作戦にも参加し、ポール＝クロ島での戦闘を経験。

解散と遺産

1944年12月、部隊は解散。アメリカ陸軍特殊部隊（グリーンベレー）、カナダ特殊作戦連隊など、現代の特殊部隊は、彼らの伝統を受け継いでいます。

受賞と記念

部隊は戦功十字章銀章（フランス）や大統領殊勲部隊章（アメリカ）を受章。多くの隊員も多数の勲章を受けています。現在も、カナダとアメリカでは、彼らの功績を称える記念行事が行われています。

大衆文化における悪魔の旅団

彼らの活躍は映画やドキュメンタリーにも数多く取り上げられています。『コマンド戦略』、『アンツィオ大作戦』、『イングロリアス・バスターズ』など、様々な作品で彼らの姿を見ることができます。

参考文献

Adleman, Robert H.; Colonel George Walton (1966). The Devil's Brigade. Philadelphia, Pennsylvania: Chilton Books.
Burhans, Robert D. (1947). The First Special Service Force. Washington, D.C.: Infantry Journal Press Inc.
* その他多数の書籍、論文、ウェブサイトなどが参考文献として挙げられます。

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