悪魔祓い、聖なる儀式

現代社会と信仰の狭間で：ドキュメンタリー映画『悪魔祓い、聖なる儀式』

2016年、イタリアとフランスの合作によって制作されたドキュメンタリー映画『悪魔祓い、聖なる儀式』(イタリア語原題：Liberami)は、世界で初めて悪魔祓いの儀式を克明に捉えた衝撃的な作品として注目を集めました。監督を務めたのはフェデリカ・ディ・ジャコモ。日本では2017年11月18日に劇場公開されました。

舞台はイタリア、シチリア島。この地で広く知られるエクソシスト、カタルド・ミリアッツオ神父（カトリック・フランシスコ会）のもとには、日々、悪魔に取り憑かれたと信じる人々、あるいは人生の行き詰まりを感じ、救いを求める人々が押し寄せます。神父は、相談者一人ひとりの話を丁寧に聞き、悪魔祓いの儀式が必要かどうかを慎重に判断します。その対応は昼夜を問わず、電話での相談にも応じるなど、献身的な姿勢が見て取れます。

映画では、数人の相談者たちの日常や葛藤が描かれるとともに、教皇庁レジーナ・アポストロルム大学の「エクソシスト養成講座」の様子も記録されています。カタルド神父自身も、会議出席のため大学を訪れた際に、相談者からの電話に対応する場面が映し出され、現代社会におけるエクソシストの役割と、その現実的な困難さを浮き彫りにしています。

しかし、この映画の制作と公開は、一部の司祭から批判を受けました。彼らは、悪魔祓いの儀式は決して見せ物ではない、また、映画で描かれた儀式の進め方は教会の教えに反すると主張しています。この意見の対立は、宗教的な儀式と現代社会の倫理観との間に存在する複雑な問題を改めて問いかけるものとなりました。

映画『悪魔祓い、聖なる儀式』は、単なる宗教的な儀式を描いた作品ではありません。人々の苦悩、信仰の力、そして現代社会における宗教の役割といった、多様な要素が複雑に絡み合い、観る者の心に深い問いを投げかけます。シチリア島の静謐な風景と、神父たちの真剣な表情、そして相談者たちの切実な訴えが、ドキュメンタリーにリアリティと重みを添えています。

さらに、ベネチア国際映画祭でオリゾンティ部門最優秀作品賞を受賞したことも、この映画の芸術的な価値の高さを示すものです。世界的に高い評価を得たこの作品は、宗教、信仰、そして現代社会の問題を深く考えるきっかけを与えてくれるでしょう。映画を通して、私たち自身の信仰や、他者への共感、そして現代社会における宗教のあり方について、改めて考える機会が得られるはずです。

この映画は、宗教に深い関心を持つ人々だけでなく、現代社会の複雑な問題に興味を持つすべての人々にとって、見応えのある作品と言えるでしょう。

関連事項
カトリック教会のエクソシスム
エクソシスム

参考サイト
映画『悪魔祓い、聖なる儀式』オフィシャルサイト
Liberami (2016)　インターネット・ムービー・データベース

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