愚なる妻

映画『愚なる妻』の概要

1922年に公開された『愚なる妻』（原題: Foolish Wives）は、ユニバーサル・ピクチャーズが製作・配給を手がけ、エリッヒ・フォン・シュトロハイムが脚本及び監督を担当したアメリカのエロティック・サイレント映画です。この作品は、シュトロハイムの監督としての三作目にあたり、彼が手がけた他の二作『アルプス颪』や『悪魔の合鍵』と同じテーマとして、人妻の情事を描いた三部作の一部を成しています。しかし、本作は映像表現とテーマの両方において当時のハリウッドの常識を破る革新性を示し、観客を驚かせました。

物語のあらすじ

物語は、ロシアの貴族を名乗るオルガとヴェラ、そして詐欺師であるカラムジン伯爵の三人が、駐米特使としてモナコに訪れたアンドリューとその妻ヘレンを狙うところから始まります。カラムジンは早速、ヘレンをドリーム館へ招待し、彼女をカジノへと連れ出します。そこで大量の金を得た後、カラムジンはヘレンを屋敷に呼び出し、さらなる金銭を求めるのですが、伯爵の手下であるメイドが嫉妬心から二人を閉じ込め、さらに屋敷に放火するという展開が待っています。最終的にヘレンはアンドリューによって救出されるものの、カラムジン伯爵はその炎の中で命を落とすこととなります。

キャスト

• - ヴワディスワフ・セルギウス・カラムジン伯爵: エリッヒ・フォン・シュトロハイム
• - ヘレン・ヒューズ: デュ・ポン
• - アンドリュー・J・ヒューズ: ルドルフ・クリスチャン
• - オルガ・ペチニコフ公爵夫人: モード・ジョージ
• - ヴェラ・ペチニコフ王女: メイ・ブッシュ
• - マルシュカ: デイル・フラー
• - 執事パベル・パヴリッチ: アル・エドマンドソン

制作背景

この映画は、当時最も製作費のかかった作品の一つであり、ユニバーサル・スタジオは「百万ドル映画」としての宣伝を行いました。フォン・シュトロハイムは、映画の上映時間を6時間から10時間に設定する計画を立てましたが、スタジオの意向により大幅に短縮されることになりました。結果、多くのシーンがカットされ、公開に至ったものの、完成時には製作費が公表され、百十万ドル以上に達したとされています。しかし、後にフォン・シュトロハイム自身は実際には30万から40万ドル程度だったと主張しています。

公開と評価

『愚なる妻』は、公開直後からマスコミによる過剰な報道を受け、特にその内容に対して多くの議論を引き起こしました。この作品は、上流階級の生活を皮肉った内容や、グラフィックな描写によって観客の度肝を抜き、フォン・シュトロハイムは当時の傑出した監督の一人として認識されるようになりました。

撮影のこだわり

シュトロハイムは、モンテ・カルロの街を忠実に再現するために、実際のロケ地さながらのセットを構築しました。撮影中は、街並みに人々や車が行き交う様子を再現するために細部にわたってこだわり、夜間撮影にも力を入れました。このような徹底したリアリズムへのこだわりが、作品に独自の魅力を与えています。撮影チームは彼の厳しい要求に応えるために多大な時間をかけることになり、それが原因で撮影期間は13ヶ月に及びました。

歴史的意義

本作は、2008年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録され、文化的、歴史的、または美的に重要な作品として認識されています。シュトロハイムの独自の視点とスタイルが詰まったこの映画は、現在もなお多くの映画愛好者に評価されています。

もう一度検索