愛してる、愛してない...

フランス映画『愛してる、愛してない...』（原題：À la folie... pas du tout）は、禁断の愛と歪んだ情念が絡み合う、スリリングな心理ドラマです。主人公は、美術学校に通う情熱的な女性アンジェリク。彼女は、既婚の心臓外科医ロイックに深く心を奪われ、彼への愛を募らせていきます。

アンジェリクは、ロイックに近づくため、大胆な行動を繰り返します。彼の自宅にバラの花束を贈ったり、なんと、ロイックの隣人の家に住み込み、彼に接近する機会を伺います。彼女の行動は、次第に執着へとエスカレートし、健全な愛情の域を超えていきます。ロイックの方も、アンジェリクの熱烈な愛情表現に戸惑いながらも、ある種の満足感を感じているようにも見えます。しかし、二人の関係は、常に危ういバランスの上に成り立っています。

物語は、ロイックと彼の妻が離婚問題で裁判所を訪れた場面で、大きな転換点を迎えます。アンジェリクは、そこで衝撃的な光景を目撃します。それは、ロイックと妻が、離婚するどころか、むしろ寄り添い、和解している姿だったのです。この場面は、アンジェリクの抱いていた幻想が打ち砕かれる瞬間であり、彼女がロイックへの愛に盲目的に囚われていたことを痛烈に示しています。

アンジェリクの行動は、単なる熱烈な恋愛という枠を超え、エロトマニア（妄想性愛障害）の兆候を示唆しています。彼女が語る物語は、必ずしも客観的な真実を反映しているとは限りません。彼女の視点を通して語られる物語は、信頼できない語り手によるものと言えるでしょう。そのため、観客は、彼女の行動の真意や、ロイックとの関係の真相を、自ら判断していく必要があります。

映画は、愛と執着、狂気と現実の狭間で揺れるアンジェリクの姿を、繊細かつスリリングに描いています。アンジェリクの行動の背景には、どのようなトラウマや心の傷があるのか、また、ロイックはアンジェリクの愛情にどう対応していくのか、など、様々な疑問が視聴者の心に浮かび上がります。

キャストについては、フランス映画界の実力派俳優たちが集結し、複雑な人間心理を巧みに表現しています。日本語吹き替え版では、石井隆夫さん、前田ゆきえさん、上田陽司さん、新垣樽助さんなど、多くのベテラン声優陣が参加し、作品の世界観をさらに深めています。

『愛してる、愛してない...』は、恋愛における狂気と、歪んだ愛の物語を深く掘り下げた、忘れられない作品です。観る者それぞれの解釈を呼び起こし、愛とは何か、そして人間関係の本質について考えさせる、衝撃的な結末が待っています。ぜひ、映画をご覧いただき、その深淵な世界を体験してください。allcinemaやIMDbなどのサイトで、より詳しい情報をご覧いただけます。

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