愛ひとつ 夢ひとつ

『愛ひとつ 夢ひとつ』（あいひとつ ゆめひとつ）は、韓国の歌手、桂銀淑（ケイ・ウンスク）が1996年9月20日にリリースした通算15枚目のシングル楽曲です。この作品は、彼女が活動拠点を移し、新たにトーラスレコードから発表した最初のシングルとして位置づけられています。

このシングルの発表を機に、アーティスト名義に一時的な変更がありました。それまで漢字表記の「桂銀淑」を用いていたのが、本作からはアルファベットと漢字を併記する「ケイ・ウンスク（桂銀淑）」という名義へと改められました。この名義表記の変更は、当時同じレコード会社に所属し、アジアで広く人気を博していたテレサ・テン（鄧麗君）のスタイルに倣ったものとされています。ただし、この新しい名義は定着せず、翌1997年7月にリリースされた次のシングル『『Yes』と答えて』からは、再び「桂銀淑」の漢字表記に戻されています。この名義変更は、当時の音楽業界における戦略的な意図や、アーティストの新たなイメージ構築を模索する過程であったと考えられます。

楽曲『愛ひとつ 夢ひとつ』は、歌手である桂銀淑自身にとって、非常に特別な意味を持つ一曲です。彼女は自身のキャリアの中で生み出された数々の楽曲の中でも、この曲が最も好きであると公言しており、深い愛着を持っています。その思い入れの強さは、ライブパフォーマンスの場面でも明確に示されています。彼女のコンサートにおいて、『愛ひとつ 夢ひとつ』は欠かせない楽曲であり、特にアンコールを締めくくる最後の曲として歌われるのが定番となっています。これは、この曲が持つ感動的な力や、ファンにとって大切な一曲であるという認識が、本人によっても共有されていることを物語っています。

このシングルのリリースに続き、約一ヶ月後の1996年10月25日には、同じタイトルを冠したオリジナル・アルバム『愛ひとつ 夢ひとつ』が発売されました。このアルバムは、シングル表題曲を中心に、桂銀淑の情感あふれる歌声を最大限に引き出すことを意図した全曲バラードで構成されており、シングルの作曲・編曲も担当した国吉良一がプロデュースを手がけています。アルバム作品として、楽曲の世界観をより深く掘り下げた内容となっています。

アルバムの発表と連動する形で、「ケイ・ウンスク（桂銀淑）コンサート〜愛ひとつ 夢ひとつ〜」と題されたコンサートツアーも開催されました。このツアーでは、アルバムおよびシングルの世界観がステージ上で表現され、多くの聴衆を魅了しました。さらに、このツアーでのパフォーマンスの模様は、翌1997年にライブアルバムおよびライブビデオとして商品化されリリースされています。これにより、『愛ひとつ 夢ひとつ』というタイトルは、単なるヒットシングルという枠を超え、アルバム、コンサート、そして映像作品へと広がる一連のプロジェクトの中心的な存在となり、1990年代後半における桂銀淑の活動を象徴するキータイトルとなりました。

このシングルに収録されているのは、表題曲である「愛ひとつ 夢ひとつ」とカップリング曲「らしくないわ」の二曲です。「愛ひとつ 夢ひとつ」の作詞は岡恵美子、作曲および編曲は国吉良一が担当しています。一方、カップリングの「らしくないわ」は、作詞が岡恵美子、作曲が村松邦男、そして編曲は再び国吉良一が手がけています。どちらの楽曲も、当時の桂銀淑の音楽性や、トーラスレコード移籍後の新しいサウンドアプローチを示す重要な作品と言えるでしょう。このように、『愛ひとつ 夢ひとつ』は、桂銀淑のキャリアにおける重要な転換点を示す作品であり、本人にとってもファンにとっても特別な意味を持つ代表的な楽曲として記憶されています。

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