愛染かつら

『愛染かつら』について

『愛染かつら』は、川口松太郎による小説であり、1937年から1938年にかけて雑誌『婦人倶楽部』に連載されました。物語は、看護婦高石かつ枝と津村病院長の御曹司である津村浩三の恋愛を軸に展開され、さまざまな困難や葛藤を乗り越えながら、愛の深さを描いています。

あらすじ

物語の舞台は、津村病院の創立25周年の祝賀日です。看護婦の高石かつ枝は、余興で歌を歌います。伴奏をするのは、病院長の長男・浩三です。この出会いがきっかけとなり、二人は頻繁に会うようになります。しかし、浩三はかつ枝に結婚を申し込むものの、彼女は亡き夫との子供である敏子を抱え、身分の違いにも悩みを抱えています。彼女の心は、誠実な浩三の熱意に次第に惹かれていくものの、両者の家族からの反対に直面します。

浩三の妹である竹子は特に強硬にかつ枝に反発し、二人は窮地に立たされます。浩三は先輩の服部に相談し、京都へ身を隠そうと決意しますが、その日、敏子が急病になり、かつ枝は約束を果たすことができません。浩三は一人で京都へ向かい、服部の助けを得て大学の研究室で過ごします。服部の妹である美也子は浩三に好意を寄せますが、かつ枝のことを知らないため、彼女を誤解する場面が続きます。

時間が経つにつれ、浩三は病院に戻りますが、竹子の圧力によりかつ枝は姿を消してしまいます。ある日、かつ枝が歌舞伎座で自作の歌の発表会を行うと新聞に報じられ、病院の看護婦たちは応援に駆けつけます。一方、浩三は裏切られたと感じ、外出許可を出さないのですが、仲間たちの支えで理解に至り、ついに全員に外出を許可します。発表会は大成功を収め、楽屋では浩三がかつ枝と再会するものの、言葉は交わされません。次の日、三人は愛染堂の前で膝をついて、未来への約束を交わします。

映画とドラマ化

『愛染かつら』は、1938年に前後篇として映画化され、主演には田中絹代、上原謙が起用されました。野村浩将監督のもと、空前のヒット作となり、多くの映像作品が続きます。特に田中版は、「日中戦争さなかの暗い世相を吹き飛ばした」と称賛されました。

1950年代から1960年代にかけて、数度にわたり映画化がなされ、さらにテレビドラマも制作されました。1965年版のテレビドラマは、特に高視聴率を記録し、社会現象となるほどの人気を博しました。続編も製作され、視聴者に感動を与え続けました。

このように『愛染かつら』は、原作小説を基にさまざまなメディアで展開され、多くの人々に愛されている作品です。家族や恋愛における試練を通じて描かれる人間ドラマは、今なお多くの人々に感銘を与え続けています。

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