愛知大学山岳部薬師岳遭難事故

愛知大学山岳部薬師岳遭難事故

概要

愛知大学山岳部において、1963年1月に発生した薬師岳遭難事故は、登山中に13名の部員が死亡したという痛ましい事件です。この事故は、富山県薬師岳で起こり、多くの教訓を残しました。

入山から登頂まで

愛知大学の山岳部パーティーは、1962年12月25日から1963年1月6日までの日程で薬師岳の登頂を目指していました。出発地点は富山県上新川郡大山町の折立で、目的には準極地法の訓練が含まれていました。12月31日には太郎小屋に到着し、登山を続ける中で日本歯科大学のパーティーと行動を共にする場面も見受けられました。

しかし、1963年1月1日、豪雪が襲い、両大学の登山パーティーは小屋に留まることとなります。翌日の1月2日、悪天候が続く中、愛知大学のパーティーは早朝に行動を開始し、山頂へ向けて出発しました。途中、キャンプを設営しましたが、その際、悪化する天候に見舞われました。やがて猛吹雪により、隊員たちは視界を失い、互いのパーティーを見失うことになります。

その後、日本歯科大学のパーティーは山頂にたどり着くも、愛知大学のパーティーが戻らなかったために下山を開始しました。しかし、愛知大学のパーティーはキャンプに立ち寄った形跡もなく、彼らの安否が心配されることとなります。

遭難確定と捜索

下山日を過ぎても連絡が取れない愛知大学のパーティーを見て、大学側は遭難の可能性が高いと判断し、富山県警察に通報しました。1月16日から捜索が始まりましたが、極端な豪雪の影響で捜索は困難を極めました。報道陣も多く動き出し、情報の錯綜が生じていた中、ヘリコプターを利用しての捜索活動が続けられましたが、手がかりは得られませんでした。

遺体の発見

捜索が続く中、1963年3月23日、名古屋工業大学の山岳部が2名の遺体を発見しました。この報告を受け、さまざまなメディアが反応し、以降も捜索が続けられました。最終的に、5名の遺体が発見され、さらなる捜索が行われる中で他の遺体も見つかりました。遺体の発見場所は登頂ルートとは大きく外れたもので、視界不良の中でルートを誤ったことが推測されました。

その後

愛知大学山岳部は、この事故を受け1965年から活動を休止しましたが、翌1966年には再開しました。しかし、再開直後にブラックな事故が発生し、部は廃部に追い込まれました。そして、1970年代には部活動の再編が行われましたが、現在は豊橋校舎においてワンダーフォーゲル部として活動が続けられています。

遭難の原因

1968年に編纂された事故報告書では、遭難の原因は多岐にわたる要因が重なっていると指摘されています。メンバーには地図やコンパスを持つ者がいなかったことや、過去の夏の登山経験が冬の遭難に繋がったのではないかとも言われています。また、豪雪の影響で登山の難易度が急激に上昇したことも大きな要因とされています。

結論

この事故は、多くの登山者にとって教訓となり、登山活動の安全性が見直されました。特に、悪天候における登山の危険性、準備の重要性が再認識されました。折立の登山口には慰霊碑が建立されており、事故の記憶を風化させない役割を果たしています。

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