成相肇

成相肇：現代美術を鋭く見つめるキュレーター、評論家

成相肇氏は、1979年生まれの日本の現代美術を専門とするキュレーター、そして美術評論家です。現在、東京国立近代美術館の主任研究員として活躍しており、日本の現代美術界において重要な役割を担っています。

氏の経歴は、学術的な研鑽と実践的な経験の両方を兼ね備えたものです。島根県出身の成相氏は、島根県立松江北高等学校卒業後、一橋大学に進学。2001年に商学部経営学科を卒業し、さらに2003年には同大学大学院言語社会研究科を修了しています。この学際的なバックグラウンドが、氏の現代美術への深い洞察力に繋がっていると言えるでしょう。

大学院修了後、成相氏は府中市美術館の学芸員としてキャリアをスタートさせます（2005年～）。その後、東日本鉄道文化財団東京ステーションギャラリーにおいて、学芸員および基礎芸術研究員として活動（2012年～）。そして2021年からは、東京国立近代美術館の主任研究員に就任し、現在に至ります。

学芸員としての活動と並行して、成相氏は精力的に美術評論活動を展開しています。その高い評価は、数々の受賞歴からも明らかです。2011年には、論文「石子順造的世界－脈打つ「ぶざまさ」を見据えて」で美連協カタログ論文賞・優秀論文賞を受賞。さらに2012年には、「石子順造的世界　美術発・マンガ経由・キッチュ行」展の企画と、そのカタログに掲載された論文により、倫雅美術奨励賞（美術評論部門）を受賞しました。これらの受賞歴は、氏の現代美術における深い知識と鋭い分析力、そして独自の視点の高さを示しています。

また、成相氏は基礎芸術Contemporary Art Think-tankのメンバー、日本現代アート委員会の委員も務めており、日本の現代美術の発展に多角的に貢献しています。

キュレーターとしての活動では、日本の現代美術の多様な側面を浮き彫りにする企画展を数多く手がけてきました。企画展における氏の選球眼と、展示構成におけるセンスは定評があり、多くの観客を魅了しています。

2023年には、『芸術のわるさ　コピー、パロディ、キッチュ、悪』（かたばみ書房）を刊行。現代美術における「悪」の側面に焦点を当て、独自の視点で考察した意欲作です。この著作は、氏の研究活動の集大成であり、今後の現代美術研究に大きな影響を与えるものと期待されています。

成相肇氏の活動は、単なるキュレーションや評論にとどまりません。日本の現代美術の現状を深く理解し、未来を見据えた活動は、今後の日本の現代美術界を牽引する存在として、その役割はますます重要になっていくでしょう。

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