戦争のはじめかた

『戦争のははじめかた』（原題：Buffalo Soldiers）は、2001年に公開されたイギリスとドイツ合作の映画作品です。日本では『バッファロー・ソルジャーズ 戦争のはじめかた』のタイトルでDVDがリリースされました。グレゴール・ジョーダン監督による、ロバート・オコナーの小説『バッファロー・ソルジャー』を原作としたブラックコメディです。舞台は1989年のドイツ、シュトゥットガルトにあるアメリカ軍基地。退屈で無気力な若きアメリカ兵士たちの日常を描いた物語となっています。

物語の中心人物は、補給部隊に所属するレイ・エルウッド。彼は職務を怠り、物資の横流しやヘロインの密造・密売といった違法行為に手を染めていました。彼の傍若無人な行動を許容する、無能で怠惰な指揮官のバーマン大佐。そんな基地に、有能で厳格なリー曹長が新たな上司として赴任してきます。リー曹長の到着によって、エルウッドの平穏な日々は終わりを告げ、基地内部の秩序と規律を取り戻そうとする動きが始まります。

キャストには、ホアキン・フェニックス、エド・ハリス、スコット・グレンといった実力派俳優が名を連ねています。ホアキン・フェニックスが演じるエルウッドは、反体制的な姿勢と怠惰さを併せ持ちながらも、どこか人間味あふれる魅力的なキャラクターとして描かれています。エド・ハリス演じるバーマン大佐は、無能で不誠実な人物像を体現し、アメリカ軍の組織的腐敗を象徴する存在となっています。そしてスコット・グレン演じるリー曹長は、秩序と正義感を持ち、基地に新たな風を吹き込む重要な役どころとなっています。脇を固めるキャスト陣も、個性豊かなキャラクターを演じきり、物語に深みを与えています。

本作は、ドイツでのロケ撮影によって、リアルな米軍基地の雰囲気を再現しています。しかし、作品の内容がアメリカ軍に批判的な内容であったため、アメリカ軍の協力は得られず、劇中に登場する軍用車両や装備品は、民間のコレクターや小道具レンタル会社から調達されたものです。実際にはアメリカ軍が使用していたものとは異なる、ドイツ製のレオパルト1型戦車やオランダ軍のM113装甲偵察車などが使用されており、その点も本作の興味深い点と言えるでしょう。

『戦争のはじめかた』は、ブラックユーモアとシニカルな視点で、戦争と平和、そして人間の愚かさや矛盾を描き出した作品です。退屈な日常と、突然訪れる緊張感、そして予測不可能な展開が、観客を飽きさせない魅力となっています。9.11同時多発テロ事件の発生により、公開が何度も延期されたというエピソードも、この作品の歴史に刻まれた出来事と言えるでしょう。公開から年月が経っても、その魅力は色褪せることなく、多くの人々を魅了し続けている傑作映画です。

この作品は、単なる戦争映画にとどまらず、人間の業や社会構造への鋭い洞察が織り込まれた、深く考えさせられる作品となっています。登場人物たちの複雑な心理描写や、緊迫感とユーモアが絶妙にブレンドされた演出は、見る者に強い印象を与え、忘れられない作品体験をもたらしてくれるでしょう。戦争や政治、社会問題に興味のある方だけでなく、優れた映画作品を鑑賞したい方にも、強くお勧めしたい一作です。

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