戦争の犬たち

戦争の犬たち（The Dogs of War）

フレデリック・フォーサイスによって1974年に発表された軍事経済小説『戦争の犬たち』は、特にアフリカの小国に焦点を当てたクーデターの陰謀を描いています。物語は、鉱山会社を率いる会長が、プラチナ鉱山の利権を奪取するために雇った傭兵たちとの関係を描写し、資本主義や軍事活動の裏側に目を向けています。

物語の中心には、西アフリカの貧しい国「ザンガロ」があります。この地には「水晶山」と呼ばれる高純度のプラチナ鉱脈が存在するとされており、会長であるマンソン卿はその存在を利用して独裁者キンバ大統領のクーデターを企てます。彼はプラチナの利権を確保するため、報告書を改竄し、他国からの干渉を巧みにかわそうとします。

マンソン卿は自身の部下にザンガロの情勢調査を命じ、その過程で傭兵キャット・シャノンに目をつけます。傭兵という存在は単なる働き手ではなく、彼ら自身が自分たちのメンツを重んじ、依頼の内容を自ら判断する職業軍人として描かれています。シャノンは、観光客になりすまし、現地を調査し、外部からの軍事作戦が成功する可能性を報告します。

物語は、シャノンたちがクーデターを実行する準備に追われる中、様々な人々の思惑が絡み合います。特に、計画の準備段階では、膨大な情報収集や武器弾薬の調達、秘密裏の資金調達など、戦争に至るまでの緻密な計画が描かれています。フォーサイスらしい知識が盛り込まれたこの部分は、単なるアクションストーリーを超えた、軍事と経済における陰謀を読者に伝えます。

クーデターの実行日に向けて、物事は加速します。シャノンたちは計画通り行動し、ザンガロの独立記念日に突入。クーデター成功後、マンソン卿は傀儡政権を立ち上げる予定でしたが、シャノンはその計画に疑問を抱くようになります。彼は現地の悲劇を理解し、今後の国家運営をより良い形で行う道を模索します。

この作品のタイトルにも見られる「戦争の犬」の表現は、シェイクスピアの言葉に由来し、戦争を引き起こす存在たちの象徴です。フォーサイスは傭兵たちを単なる「犬」とするのではなく、彼らが自らの選択を尊重するプロフェッショナリズムを持っていることを強調しています。しかし、最終的には、戦争によって翻弄される現地の人々や、無情な思惑が生み出す痛ましい現実が浮き彫りになります。

物語の結末では、シャノンはエンディーンに依頼主の真意を明かし、移民労働者たちによる新たな政権の設立を提案します。ザンガロの未来を託す形で、彼は新たな国の治安や発展を各民族に委ねることを決めます。

『戦争の犬たち』は、中盤の緊迫した陰謀から最終的な衝突を経て、戦争の実態とその結果について深く考えさせる作品です。その後、1980年には同名の映画化も行われましたが、原作とは異なる展開が多く含まれています。フォーサイスの作風は、現実の軍事や経済の側面を反映したリアリズムと共に、彼の取材による知識を活かしており、今日でも多くの読者にその深いテーマ性が評価されています。

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