戦災復興院

戦災復興院：戦後日本の都市復興を担った機関

戦災復興院は、第二次世界大戦終結後の1945年11月5日、焼け野原と化した日本の都市を復興させるため、幣原内閣によって設立されました。空襲による甚大な被害を受けた都市の復興という、極めて困難な使命を担った機関です。

設立と目的

小林一三国務大臣を初代総裁として発足した戦災復興院は、当初は東京・芝の国民学校の校舎を間借りするなど、非常に簡素な環境からスタートしました。内務省国土局計画課などから集められた約140名の職員が、戦災地の市街地計画、住宅建設・供給、土地・物件の処理など、多岐にわたる業務に携わりました。

戦災復興院の設立目的は、大きく分けて以下の3点に集約されます。

1. 戦災地の都市計画: 空襲で破壊された都市の街づくりを計画すること。
2. 住宅の建設と供給: 被災者への住宅供給を推進すること。
3. 土地・物件の処理: 被災地の土地や建物の処理、活用を促進すること。

これらの目標は、既存の省庁の施策と並行して、被災者の救済と戦災地の復興という喫緊の課題に対応するためのものでした。また、将来的な復興省への昇格も視野に入れた組織でした。小林一三総裁は就任会見で、被災者への迅速な住宅供給を最優先課題と強調しました。

戦災復興計画基本方針

戦災復興院の重要な成果の一つに、「戦災復興計画基本方針」があります。これは内務省計画課長であった大橋武夫の主導の下、わずか2ヶ月で策定され、1945年12月30日に閣議決定されました。

注目すべきは、この計画が敗戦の可能性を予見した上で、戦前から着々と準備されていたという点です。大橋は1944年9月、既に日本の敗戦を想定し、復興計画の作成を部下に指示していました。

計画の内容は画期的で、将来の車社会を見据え、主要道路の幅員を大都市で50メートル以上、中小都市でも36メートル以上とするなど、大規模な都市計画を構想していました。さらに、緑地帯や防火帯を兼ねた100メートル幅の道路建設も推進されました。都市公園の拡充も重視され、緑地面積を市街地面積の10％以上に増やす目標が掲げられました。

全国115都市が戦災都市として指定され、国庫補助率9割という積極的な財政措置が取られたことも特徴です。

計画の実施と課題

しかし、1949年のドッジ・ラインによる緊縮財政の影響で、戦災復興計画は大幅な縮小を余儀なくされました。国庫補助率は5割に減額され、1959年には計画は打ち切られました。

当初計画されていた100メートル道路24本は、名古屋の2本と広島の1本しか実現しませんでした。また、戦災で焼け残った木造住宅密集地域（約8,000ヘクタール）は、復興計画の対象外となり、その再整備は大きく遅れました。

廃止とその後

戦災復興院は、内務省の解体に伴い、1947年12月31日に廃止されました。翌年1月1日、旧内務省国土局と統合され「建設院」となり、後に建設省へと発展していきました。現在、国土交通省の市街地整備課が、戦災復興院の事業を引き継いでいる部署と言えるでしょう。

まとめ

戦災復興院は、戦後日本の都市復興において、極めて重要な役割を果たした機関でした。その功績は、現在の都市計画の基礎を築いた点にありますが、一方で、財政難や様々な制約によって計画が完全には実現しなかったという課題も残しました。戦災復興院の歴史を学ぶことは、日本の都市発展の過程を理解する上で欠かせないものです。

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