戦犯旗

戦犯旗とは

「戦犯旗」とは、2012年頃に韓国で生まれた造語で、日章旗と同様に太陽を意匠とする旭日旗を指します。この言葉は、法的・学術的な根拠を持たず、韓国における反日感情の高まりとともに、旭日旗を悪魔化する目的で使用されるようになりました。本記事では、この「戦犯旗」問題の背景と経緯、そして国際社会における旭日旗排除運動について解説します。

前史：旭日旗への関心の低さ

かつて、韓国では日本の国旗である日章旗が軍国主義の象徴と見なされ、抗議活動で冒涜の対象とされていました。旭日旗への関心は低く、日本のアニメ作品に旭日旗や類似の模様が登場しても、特に問題視されることはありませんでした。若い世代の間では、旭日旗のデザインがファッションアイテムとして取り入れられることもありました。2012年以前には、旭日旗を問題視する事件は散発的で、継続的な話題となることは少なかったのです。

奇誠庸の猿真似パフォーマンスと「戦犯旗」の誕生

2011年から2012年にかけて、日本と韓国のサッカー国際試合で、韓国人選手による日本人への人種差別行為や政治宣伝行為が問題となりました。特に、キ・ソンヨン選手がゴールパフォーマンスで猿の真似をしたことは、国際的な非難を浴びました。当初、キ・ソンヨン選手は、このパフォーマンスを日本人への差別ではないと主張しましたが、後に観客席の旭日旗を見て感情的になったと釈明しました。しかし、実際には観客席に旭日旗は掲げられていませんでした。この事件を契機に、韓国では旭日旗に対する批判が高まり、旭日旗をナチスのハーケンクロイツと同等と見なす主張が展開されるようになりました。

2012年、李明博大統領が竹島に上陸した事件をきっかけに、ロンドン五輪で韓国のサッカー選手が「独島はわが領土」と書かれたプラカードを掲げたことが、国際オリンピック委員会（IOC）の規定に抵触するとして問題になりました。この際、韓国のニュースサイトが「過去に日本の侵略軍が使用した旗であるため、アジアでは『戦犯旗』とも呼ばれる」と報道し、「戦犯旗」という言葉が初めて登場しました。

旭日旗排除運動の激化

その後、韓国では旭日旗に対する批判が社会全体に広まり、スポーツ界、エンターテイメント界など、あらゆる分野で旭日旗を排除しようとする動きが活発化しました。

スポーツ界での動き

2013年、サッカー東アジアカップの日韓戦で、韓国側応援団が政治的なメッセージを掲げたことに対し、日本側は遺憾の意を表明しました。すると、韓国側は「競技場では戦犯旗が振られている」と反論し、旭日旗を用いた応援を問題視しました。また、2017年には、AFCチャンピオンズリーグの試合で、旭日旗を掲げたサポーターに暴行を加えた事件が発生し、旭日旗は国際的な不適切行為と認識されるようになりました。

エンターテイメント界での動き

2013年、イギリスのロックバンドMuseのミュージックビデオに旭日旗を連想させる画像が使用されたとして、韓国から抗議が殺到し、謝罪と削除が行われました。また、韓国のアイドルグループのポスターや帽子に旭日旗に似た模様が使われているとして非難され、謝罪に追い込まれる事例が相次ぎました。2016年には、韓国の人気アイドルグループ「少女時代」のメンバーがSNSに投稿した写真のスタンプが旭日旗をアレンジしたデザインだと批判を浴び、レギュラー番組を降板させられました。これらの事例から、旭日旗を批判することで道徳的優位を得ようとする韓国社会の傾向が伺えます。

可及適用という考え方

韓国には、過去の出来事を現在の価値観で評価し、問題があれば遡って是正するという「可及適用」の文化があります。この考え方に基づき、過去に制作された旭日旗を連想させるデザインの追放も推進されています。2002年に制作された全羅南道霊光郡のシンボルマークが、2020年に旭日旗に類似していると批判され、廃止されたことは、その代表的な例です。

国際社会での旭日旗排除運動

韓国の旭日旗排除運動は、国際社会にも広がっています。

アメリカでの動き

アメリカでは、韓国系アメリカ人を中心とした団体が、旭日旗はアジア人に対する憎悪表現であるとして、旭日旗を連想させるデザインの撤去や焚書を求めて運動を展開しています。ニューヨークやロサンゼルスの公共の場で、旭日旗を連想させる壁画や展示物が撤去されたり、韓国系アメリカ人アーティストの作品に置き換えられたりする事例も起きています。

その他の国での動き

映画、音楽、スポーツなど、さまざまな分野で、旭日旗やそのデザインが問題視されるようになりました。例えば、映画「ボヘミアン・ラプソディ」の映像に旭日旗を連想させるTシャツが映っていたため、修正される事態が起きました。また、ユニクロやサッカーチームが旭日旗を連想させるデザインを使用したことに対して、抗議を受けて謝罪する事態も発生しています。

旭日旗を巡る日韓の外交問題

旭日旗問題は、日韓の外交問題にも発展しています。2018年に韓国で開催された国際観艦式で、韓国側が日本の海上自衛隊に対し、自衛艦旗（旭日旗）の掲揚自粛を要請したことに対し、日本側は国際的な慣習であるとして拒否し、観艦式への参加を取りやめました。

日本国内での旭日旗を巡る議論

日本では、旭日旗は古くから漁船の大漁旗や祝い旗として使われており、自衛隊の旗としても使用されています。しかし、韓国での旭日旗排除運動の影響を受け、日本国内でも旭日旗に対する批判的な意見が出てきています。特に、2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピックを控え、旭日旗の使用に関する議論が活発化しました。

まとめ

「戦犯旗」という言葉は、韓国で反日感情が高まる中で生まれた造語であり、法的根拠はありません。旭日旗は、歴史的な背景から、韓国では日本軍国主義の象徴とみなされ、排除運動の対象となっています。しかし、日本国内では、旭日旗は伝統的なデザインであり、広く親しまれています。この問題は、日韓間の歴史認識の違いや感情的な対立が絡み合っており、解決が難しい状況です。しかし、旭日旗を巡る問題を理解するためには、歴史的背景とそれぞれの立場を理解する必要があります。

この問題は、単なるデザインの問題ではなく、歴史認識、民族感情、そして国際的な政治が複雑に絡み合った問題であることを理解する必要があるでしょう。

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