戦略情報システム

戦略情報システム（SIS）とは

戦略情報システム（SIS、Strategic Information System）は、企業が情報技術を戦略的に活用し、競争優位性を確立するためのシステム概念です。従来のMIS（経営情報システム）が企業内部の効率化に焦点を当てていたのに対し、SISは企業外部、特に顧客や競合他社との関係性を重視します。1980年代に欧米で金融自由化や航空自由化が進む中、情報技術が飛躍的に発展し、企業は情報ネットワークを通じて他社や消費者との連携を深めるようになりました。このような背景から、SISは単なる情報処理システムではなく、企業の戦略的な意思決定を支える重要な要素として認識されるようになりました。

SISの定義

SISの定義は、その多様な実態を反映して複数存在します。代表的なものとして、ワイズマンは「企業の競争戦略を支援し、または形成することを意図した情報技術の利用法」と定義しています。また、シノットは「情報技術を応用して顧客を獲得し、市場を制覇すること」と定義し、より分かりやすくSISの本質を捉えています。日本においては、根本忠明が「顧客サービスの創造をめざす戦略展開を支援する情報技術の革新的な活用」と定義し、辻淳二は「時代の流れに合わせて企業が生き残り、変容し、進化するための機動力をもたらすシステム」と定義しています。これらの定義からもわかるように、SISは単なる情報システムではなく、企業の戦略と密接に結びついたシステムであり、競争力を高めるための重要なツールと言えるでしょう。

SISの歴史

SISの歴史は、1960年代後半の日本の都市銀行におけるオンラインシステム導入競争に遡ります。当時、高度経済成長期を迎え、大企業への融資が増加する中、各都市銀行は預金獲得競争を激化させました。その中で、オンラインシステムは顧客サービスの向上や業務効率化に不可欠なものとなり、各行は積極的に導入を進めました。この時期のオンラインシステムは、現在のSISの原型と言えるでしょう。

1980年代に入ると、欧米で金融・航空自由化が進み、企業間競争が激化しました。その中で、航空会社のCRS（自動予約システム）や金融機関のATMネットワークは、顧客獲得競争や差別化戦略の重要な要素となりました。日本でも1980年代後半から国際競争が本格化し、航空業界では海外のCRS導入が進められました。また、1989年にはワイズマンの著書が翻訳出版されたことで、SISという概念が日本で広く知られるようになりました。

SISの具体例

SISの事例は多岐にわたりますが、ここでは代表的なものをいくつか紹介します。

近畿日本ツーリストの旅館予約オンラインシステム：1967年に導入されたこのシステムは、当時としては画期的なもので、個人旅行のニーズに対応し、予約業務を効率化しました。
日本経済新聞社の電算写植システム（CTS）：1978年に完成したこのシステムは、新聞制作の効率化だけでなく、新聞データの多重活用を可能にし、日経新聞の総合情報産業化に大きく貢献しました。
セブンイレブンのコンビニATM：2001年に設立されたセブン銀行は、コンビニATMからの手数料収入を基盤とするビジネスモデルを確立し、現在では日本最大のATMネットワークを形成しています。

これらの事例からもわかるように、SISは大手企業だけでなく、ベンチャー企業でも積極的に活用されています。また、特定の業界に限定されず、様々な分野で企業の競争力強化に貢献しています。

SISとDSSの違い

SISと混同されやすい概念として、DSS（意思決定支援システム）があります。DSSは経営者の意思決定を支援するためのシステムであり、MISの最上位システム（経営トップレベル）に位置づけられます。一方、SISは、顧客獲得競争や競合他社との競争優位のための情報技術であり、多くはMISの底辺システム（オペレーションシステム）として機能します。つまり、DSSが経営戦略の意思決定を支援するのに対し、SISは具体的な競争戦略の実行を支援するという点で違いがあります。

まとめ

戦略情報システム（SIS）は、企業が競争優位性を確立するための重要なツールです。情報技術の進化とともに、SISは企業の戦略的な意思決定を支え、市場での成功に不可欠なものとなっています。今後も、企業はSISを効果的に活用し、競争激化する市場で生き残っていく必要があるでしょう。

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