戦術データ・リンク

戦術データ・リンク（TADIL）

戦術データ・リンク（TADIL）は、軍事作戦における情報の伝達、配信、共有を目的としたデジタル通信システムの総称です。このシステムは、音声情報から自己または敵の位置や状態まで、幅広い情報を一括して送受信できます。具体的には、可視光、赤外線、レーダー表示などの画像情報も含まれます。知識の秘匿性や対妨害性に優れたデジタル技術を基にし、高周波の電波を利用して効率的な情報伝達を実現しています。

この戦術データ・リンクを活用することで、軍の組織は迅速かつ効率的に情報を共有し、指揮管理能力を高めることができます。また、装備の有無やバージョンによって、兵器の能力や指揮官からの期待値が読み取れるため、近代戦においては非常に重要な役割を果たしています。

アメリカ軍による軍事技術の革新においても中心的な役割を担っており、20世紀末からは多様な情報を統合して共有する計画が進められています。これにより、従来の中間管理層を省略し、迅速な情報収集と指揮命令の伝達が期待されています。具体的には、部隊間の補給優先順位を明確にすることが可能となり、戦役の遂行を効率化します。

主な戦術データ・リンクの種類

TDDL

時分割データ・リンク（TDDL）は、主に西側諸国の空軍における地対空データ・リンクシステムです。アメリカの半自動式防空管制組織や、自衛隊の自動警戒管制システムにおいても使用されています。日本版のTDDLでは、時分割多重化技術を採用したリンク4が導入されています。

リンク4 (TADIL-C)

リンク4は、主にNATO及びアメリカ海軍での航空機に関連するデータ・リンクで、1950年代から運用されています。通信速度は5,000bpsであり、リンク4Aとリンク4Cの2つの形式が存在しますが、いずれも古い技術のため電子戦に対しては脆弱です。

リンク11 (TADIL-A/B)

リンク11は、アメリカ海軍や空軍、NATOで使用される標準的なデータ・リンクで、比較的複雑なネットワーク接続方法を採用しています。メッセージは多岐にわたり、異なるタイプの目標座標や情報を伝達します。

リンク16 (TADIL-J)

リンク16は、アメリカの統合戦術情報伝達システムを使用した新しいデータ・リンクであり、リンク11に比べて伝送速度が向上し、衛星通信にも対応しています。このシステムは、日本の航空自衛隊や海上自衛隊によっても運用されています。

VI情報システム（IVIS）

IVISは、装甲車両が使用する簡易データ・リンクシステムであり、各車両の位置情報と目標情報を共有する能力を持っています。これにより統合的な指揮・管理が可能になり、新たなC4Iシステムへと発展中です。

戦術データ・リンクは、近代戦における作戦の成功に不可欠なシステムであり、各国の軍隊においてもますます重要視されています。今後も進化を続けるであろうこれらの技術は、戦術運用における情報管理と共有のあり方を根本から変える可能性を秘めています。

もう一度検索