房住山

房住山（ぼうじゅうざん）

秋田県三種町と能代市にまたがる房住山は、古くから信仰の対象とされてきた山です。別名、梵字宇山とも呼ばれます。

歴史と伝説

古代からの信仰

房住山は、平安時代初期には天台山の名で開かれ、山岳仏教の一大拠点として栄えました。坂上田村麻呂による蝦夷征伐の際、長面兄弟との戦いの舞台となり、堂塔が崩壊するなどの被害を受けたと伝えられています。この戦いにまつわる地名伝説が数多く残されており、その分布は広範囲に及んでいます。

房住山の復興と衰退

戦の後、房住山は再興し、多くの宿坊が建てられましたが、江戸時代初期には寂れてしまいました。大幢寺が焼失した後、杉本房最勝院だけが法灯を守っていましたが、明治時代の廃仏毀釈運動により、すべての修験寺院が廃寺となりました。現在では、寺屋敷という地名だけが残っています。

地名伝説

『房住山昔物語』や『梵字宇山興立記』には、長面、翁面、中津又など、房住山周辺の地名の由来が語られています。これらの伝説は、宗教的な物語と絡み合いながら、独特の世界観を作り上げています。

菅江真澄と石川理紀之助の記録

江戸時代の紀行家、菅江真澄は、70歳の頃に房住山を訪れ、山岳信仰の伝説を記録しました。また、篤農家の石川理紀之助は、菅江真澄の記録を『秋田の昔』に収録・印刷し、後世に伝えました。石川は自らも房住山に登り、その様子を記録に残しています。

三十三観音と石仏

江戸時代末期には、信仰の山を観音霊場にしようと、三十三観音の石仏が尾根沿いに安置されました。これらの石仏は、男鹿石で作られており、地元の人々の信仰の厚さを物語っています。

小野小町伝説

房住山には、小野小町が眼病や肌荒れの回復を願って訪れたという伝説も残されています。小町は二段の滝で身を清めてから入山しましたが、山道の険しさに途中で引き返したと伝えられています。小町の清水は、現在も湧き水が確認でき、地域住民の生活用水として利用されています。

鬼首山神社

上岩川地区の鬼首山神社には、坂上田村麻呂が賊を討伐した際に、その首を埋めたという伝説が残されています。また、小野小町がこの地を訪れた際に、清水が湧き出したという話も伝えられています。

登山と観光

現在、房住山の麓には、観光案内所「ぼうじゅ館」やコテージ村が整備されており、多くの観光客が訪れます。登山道は整備されており、33の観音菩薩と8体の地蔵菩薩が点在しています。山頂からは、森吉山や大潟村、男鹿半島、日本海を一望でき、その美しい景色は訪れる人々を魅了します。登山時間は、登山口から山頂まで約2時間、山頂から寺屋敷まで約1時間です。

主要な登山ルート

一般ルート: 滝ノ上集落跡にある観光案内所から登山道に入り、観音菩薩像を巡りながら山頂を目指します。
房住神社ルート: 房住神社を経由して登るルートは、比較的緩やかで、楽に登山を楽しめます。ただし、10番目の観音菩薩像からのスタートとなります。
ドッケ峠ルート: 能代市二ツ井町から三種町に至る林道の峠から寺屋敷へ至るルートです。

登山時の注意点

山頂にあるトイレは、利用できない場合があるため、事前に確認が必要です。
台倉の坂は、急峻な難所です。迂回路も整備されていますが、注意して通行してください。

参考文献

秋田叢書 別集 第2 (菅江真澄集 第2) 房住山昔物語、菅江真澄
草木谷叢書 秋田のむかし 巻１ 房住山昔物語，梵字宇山興立記、石川理紀之助編集
『マンガで読む 房住山 昔物語』、立松昴治、平成23年（2011年）
『房住山三十三観音』、琴丘町教育委員会、1979年3月
『房住山とわがふるさとの神々』、岩城英信、1980年

房住山は、その豊かな自然と歴史、伝説が織りなす魅力的な場所です。ぜひ一度訪れて、その魅力を体感してください。

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