手口

手口（てぐち）

「手口」（てぐち）とは、ある行為を行うにあたって用いられる具体的な方法や手順、特にそれが習慣化されたものを指す言葉です。ビジネスにおける取引のやり方や、犯罪捜査の分野で犯人が常習的に用いる手法など、文脈によってその意味するところは異なりますが、いずれも対象の行動パターンや特性を理解する上で重要な概念となります。ラテン語の「modus operandi（モドゥス・オペランディ）」とほぼ同義で用いられることもあります。

犯罪捜査における手口

この用語が広く知られるのは、主に警察による犯罪捜査の場面でしょう。ここでは、特定の犯罪者が犯行に際して用いる、定型的な行動パターンや手法を指します。これには、被害者の選定方法、現場への侵入手段、犯行に使用する道具、証拠の隠滅方法、あるいは犯行後の逃走経路といった、一連の犯罪行為の中で犯人が繰り返し行う傾向のある特徴的な行動が含まれます。

犯罪捜査官は、事件現場に残された痕跡や証言などから、犯人の手口を詳細に分析します。この分析は、犯罪者の心理的な傾向や背景を推測する犯罪者プロファイリングの手法においても活用され、犯人の人物像を絞り込む手がかりとなります。また、複数の未解決事件において共通する類似の手口が見られる場合、それらが同一犯による犯行である可能性を示唆する重要な証拠となり得ます。手口の情報は、容疑者の特定、早期の逮捕、あるいは犯行を制圧するための作戦立案といった、捜査の各段階で極めて有効に機能します。

犯罪学の分野でも、犯罪者の分類や犯罪行動の分析を行う際に、手口は重要な研究対象となります。

証券取引における手口

日本の証券取引市場、特に株式の売買取引においては、「手口」という言葉は全く異なる意味合いで用いられます。ここでは、特定の銘柄について行われた売買取引を、「どの証券会社を通じて売り注文が出されたか（売り手口）」、そして「どの証券会社を通じて買い注文が出されたか（買い手口）」という形で示した取引状況の明細を指します。

証券取引所は、各銘柄の日々の取引終了後に、主要な証券会社別の売買高を集計し、「手口情報」として公開しています。この手口情報を見ることで、特定の日にどの証券会社がその銘柄を多く売買したかを知ることができます。これは、特に機関投資家や大口投資家の売買動向を推測する上で有効な情報とされています。なぜなら、一般的に大口の取引は特定の少数の証券会社を通じて行われる傾向があるため、手口情報からそうした投資家の「思惑」や市場への影響力を読み取ろうとする分析が行われるからです。多くの個人投資家や市場参加者は、この手口情報を基に、今後の株価の動きを予測したり、自身の投資判断の参考にしたりします。ただし、手口情報は過去の取引結果を示すものであり、将来の株価を保証するものではありません。

このように、「手口」という同じ言葉であっても、文脈によってその内容は大きく異なりますが、いずれの場合も対象となる行動や状況の特性を捉え、分析するための重要な要素として機能しています。

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