手形訴訟

手形訴訟についての解説

手形訴訟（てがたそしょう）は、民事訴訟法における特定の訴訟形態で、主に手形金の支払いを求めるために設けられた簡略化された訴訟手続きです。この訴訟は、速やかな判断が求められるため、特有のルールが設けられています。

概要

手形訴訟は、手形金の支払請求と、それに伴う法定利率に基づく損害賠償の請求に関する略式訴訟です。この制度は、大正15年（1926年）に施行された旧民事訴訟法によって一度廃止されましたが、その後の財界からの強い要望を受けて、昭和39年（1964年）に復活しました。現行の民事訴訟法では第350条から第366条までに手形訴訟に関する詳細が規定されています。

特徴

手形訴訟を利用する場合、訴状にその旨を明記する必要があります（第350条第2項）。以下に、この訴訟形態の特徴をまとめます。

1. 反訴の不可: 手形訴訟では反訴を行うことができません（第351条）。これは、訴訟の迅速化を目的としており、対立を複雑にしないためです。

2. 証拠方法の制限: 証拠として提出できるのは基本的に書証のみです（第352条第1項）。ただし、文書の成立や手形の提示に関する事柄については、当事者尋問が可能です（同条第3項）。これは、証拠の信頼性を確保するための手段ともいえます。

3. 文書提出命令の禁止: 原則として、文書提出命令や文書の送付嘱託は認められません（第352条第2項）。そのため、証拠として提出できるのは、当事者が所有する書証、つまり手形そのものである必要があります。

4. 判決の特徴: 判決は「手形判決」として記載されます（民事訴訟規則第216条）。また、判決に対する控訴は許可されませんが（第356条）、訴えが却下された場合を除いています。ただし、判決を下した裁判所に対して異議申立てを行うことが可能です（第357条）。

5. 仮執行宣言: 判決が原告の請求を認めた場合、必ず仮執行宣言を付しなければなりません（第259条2項）。これは、迅速な債権回収を支援するための措置です。

6. 通常訴訟への移行: 原告はいつでも通常訴訟への移行を申し立てられ（第353条第1項）、適法な異議申立てがあれば通常訴訟に移行します。この場合、通常訴訟における判決については控訴可能です。

小切手訴訟との関連

手形訴訟に類似の手続きとして、小切手訴訟があります。これは、民事訴訟法第367条において定められた制度で、手形訴訟の規定が準用されます。

まとめ

手形訴訟は、迅速に手形金を請求するために特化した法律手続きです。特有のルールが多く存在し、一般的な訴訟とは異なる点があるため、適切に理解することが重要です。この制度は、特に商取引において、法的な利便性と効率性を提供します。

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