手筒花火

手筒花火とは

手筒花火は、約1メートルの竹筒に火薬を詰め込み、人がその筒を抱えたまま点火し、火柱をあげる独特な花火のスタイルを楽しむものです。打ち上げ式の花火とは異なり、下から吹き上げる方式であり、その火柱は特に大きいものだと10メートルを超えることもあります。この花火は、愛知県豊橋市の吉田神社を発祥の地とし、17世紀からの長い歴史を持っています。そのため、愛知県東三河地方や静岡県の遠州地方を中心に、今も多くの地域で大切に受け継がれています。

手筒花火の起源

手筒花火の起源は、16世紀の日本に遡ることができます。この時期、鉄砲が伝来し、それに伴って花火の製造が始まりました。「宮中秘策」には、1613年に徳川家康が江戸城で花火を見物したという記録があります。この花火の一種が手筒花火であり、徳川の砲術隊が三河岡崎に伝えた技術を基に、三河と遠州地区で手筒花火が発展していったと伝えられています。さらに、豊橋市の吉田神社に残る古い文献には、1558年に手筒花火が行われたことが記載されており、この地域での花火の歴史の深さを物語っています。

手筒花火の特徴

手筒花火の最大の特徴は、地元の男性たちが資格を取得し、その手で竹筒を切り、火薬を詰める全ての工程を行う点にあります。そして、完成した手筒花火は地域の神社の祭りで奉納されます。点火の瞬間、轟音と共にオレンジ色の火柱が立ち上がり、参加者は仁王立ちの姿勢でその美しさを楽しみます。花火が終わるときには「はね」と呼ばれる衝撃音で手筒の底が破裂し、壮大なフィナーレを迎えるのが一般的ですが、遠州地方では一部に「はね」がないものも存在します。

手筒花火の地域分布

愛知県東三河地方と静岡県遠州地方の浜名湖周辺が、手筒花火の伝統的な行われる地域として知られています。しかし、遠州地方でも天竜川以東では手筒花火の伝承が少ないため、最近では手筒花火の伝統を継承する団体を招いて新たなイベントが行われることが増えています。

主な祭り・イベント

愛知県では、豊橋市で「豊橋祇園祭」、また「炎の祭典」や「羽田祭」などが手筒花火の名物イベントとして知られています。豊川市や新城市でも多様な祭りが行われ、手筒花火が地域の文化として根付いています。さらに、静岡県の浜松市でも「三ケ日まつり」や「HONDA夏祭り」等で手筒花火が披露される他、一部の岐阜県や群馬県などでもその魅力を楽しむことができます。

手筒花火は単なる花火の一つではなく、地域の人々に愛され、長い歴史を背景に持つ伝統文化の中で生き続けている芸術でもあります。これからも、手筒花火が多くの人々に楽しまれるイベントとして、地域の祭りを華やかに彩り続けることでしょう。

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