才川町 (前橋市)

才川町（さいがわまち）

才川町は、群馬県前橋市の歴史において重要な位置を占める旧町名の一つです。現在は住居表示の実施によりその名は地図上から消滅していますが、かつてこの地域は前橋市の中心部から見て北西のエリアに位置し、現在の若宮町一丁目、二丁目、三丁目、四丁目、および日吉町四丁目の各一部に相当する広がりを持っていました。

地理的な特徴

旧才川町の地域は、前橋市の市街地北西部に位置しており、地理的には概ね群馬県道151号津久田停車場前橋線に沿って南北に細長く広がっていたとされています。この県道は現在も主要な交通路であり、往時の才川町も交通の便が良いエリアであったことが推測されます。周囲は市街地の一部として発展しており、かつての面影は都市景観の中に溶け込んでいます。

歴史的な歩み

才川という地名は古くから存在し、江戸時代には前橋藩の領地に属していました。前橋城下の発展に伴い、この地域は町人町として区画整備が進められました。具体的には、細ヶ沢町、広瀬河岸、細ケ沢新町といった町人地が形成され、次第に前橋城下の範囲に取り込まれていったと考えられています。特に広瀬河岸は、河川交通を利用した物資の輸送において重要な役割を果たした可能性がある地域です。明治時代に入っても地域の境界変更は続き、1876年（明治9年）には、前橋城下に存在した武家屋敷街の一部である群馬郡前橋一才小路や東一才小路も才川の区域に編入されるなど、その範囲を変化させていきました。

近代の行政区画の変遷としては、1889年（明治22年）に周辺の30町11大字と合併して東群馬郡前橋町が成立した際に、才川は前橋町の一部となりました。その後、1892年（明治25年）に前橋町が市制を施行して前橋市が誕生すると、才川町は前橋市の町名として引き継がれました。当初は大字であった才川は、1910年（明治43年）に正式に才川町として単独の町名に昇格しています。

住居表示による消滅

そして、戦後の都市計画の一環として、1966年（昭和41年）に前橋市全体で大規模な住居表示制度が実施されました。この町名変更に伴い、才川町の区域は細分化され、その南部は若宮町一丁目および二丁目に、北部が若宮町三丁目および四丁目に、東部が日吉町四丁目の一部としてそれぞれ再編成されることとなりました。これにより、「才川町」という歴史ある町名は行政上の区分としては消滅し、現在の町名に引き継がれています。

このように、才川町は江戸時代の城下町の一部として形成され、明治以降の市制施行を経て前橋市の町名となり、最終的には現代の住居表示によってその名を終えた地域です。旧町名としての才川町の歴史は、前橋市の都市構造の変化や発展の過程を今に伝える貴重な一端と言えるでしょう。

参考文献：
商工まえばし別冊 「旧町名への旅」

関連項目：
前橋市
群馬郡

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