技師の親指

「技師の親指」

アーサー・コナン・ドイルが創作した短編小説『技師の親指』は、著名なシャーロック・ホームズシリーズの一作品であり、1892年に発表されました。本作は特に、ワトソンがホームズに依頼を仲介する珍しい構成を採っています。このエピソードは、ふたりの名探偵が危険な謎に挑む様子を描き出しています。

あらすじ

1889年の夏、独立した開業医のワトソンは、突然訪れた傷を負った男、ヴィクター・ハザリーに出会います。彼は水力技師で、切断された親指を抱えて治療を求めていました。ハザリーは、ライサンダー・スターク大佐という男から高額の報酬を受けて水圧機の修理を依頼されたものの、その依頼が裏にある危険な陰謀へと彼を引き込むことになります。

依頼の背景には、スターク大佐が自宅の土地にある酸性白土を掘り出し、売却して隣接する土地を購入しようとする秘密が隠されていました。大佐はこの任務を内密にするように求め、ハザリーに水圧機を修理させるという不自然な条件を提示します。報酬の魅力に惹かれ、ハザリーは仕事を引き受けることになったのです。

彼は指定された夜の汽車で、見知らぬ屋敷へと向かいます。馬車に乗って到着すると、そこには彼一人だけしかおらず、やがて不安を抱えたハザリーは、片言の英語を話す謎の婦人から逃げるよう警告されます。しかし、彼はその警告を無視し、修理作業を始めることになります。

作業中、ハザリーは水圧機の中に金属の薄片を発見しますが、その直後に大佐が彼を抹殺しようと試みます。ハザリーは必死に逃げ、追手の包丁によって親指を失いながらも、屋敷からなんとか脱出します。失神し、意識を取り戻した時、彼は安全な場所にいました。

結末と解決

ハザリーはワトソンに助けを求め、ホームズと共に事件の真相を追い求めることに。ホームズは過去の新聞を調べ、昨年に行方不明になった水力技師の話を見つけます。その後、彼らは火災で焼けた屋敷を訪れ、そこで発見されたのは大量のニッケル、スズ、そして切り取られた親指でした。事件の背後にあったのは、スターク大佐とその同僚たちによるニセ金作りの陰謀だったのです。

事件への関与が明らかになるにつれ、ホームズはこの謎めいた出来事の真実を解明し、ハザリーは不幸にも親指を失ったものの、貴重な教訓を得ることになります。ダークなミステリーの中に人間の善意も存在していることを示唆するこの作品は、一般的な探偵小説の枠を超えた、深い考察を与えてくれます。

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