投票権法 (1965年)

1965年投票権法の概要

1965年投票権法は、アメリカ合衆国における投票時の人種差別行為を禁止し、特に南部の人種的少数者が投票できる権利を保障する重要な法律です。この法律は、1965年8月6日にリンドン・B・ジョンソン大統領によって署名され、法制化されました。その成立は、公民権運動の高まりによるもので、これは1960年代の歴史においても重要な転換点となりました。

法律の主要な条項

投票権法には、全国的に適用される「一般条項」と特定の地域にのみ適用される「特殊条項」が含まれています。特に、第2節では人種や言語的少数者への差別を禁じ、過去に差別を行っていた地域に対して特有の制限を設けています。

一般条項

一般条項においては、各州や地方政府が投票権に対して差別的な法律を施行することを禁止しています。特に、識字試験やその他の差別的手段を具体的に違法とし、投票のアクセスを保障します。

特殊条項

第5節では、特定の司法管轄区域が投票法の変更を行う際に、事前に連邦政府からの承認を必要とする「事前点検要件」が設けられています。この条項は、歴史的に差別的行為が行われてきた地域に特に適用されるもので、この要件の下ではその変更が人種的少数者に対する差別を生じるものでないかを確認します。
この法律は、南部の多くの州において具体的に採用された、例えば人頭税や識字試験など、反人種的な機会を奪うための手段を排除するためには不可欠でした。

歴史的背景

投票権法の制定以前、アメリカ合衆国の憲法修正第13条、第14条、第15条は、いずれも奴隷制度の廃止、平等な市民権、投票権の保障をうたっていますが、実際には南部各州において多様な形式の人種差別が行われ続けていました。特に、1900年代に入ると、南部州ではジム・クロウ法などによって、アフリカ系アメリカ人の選挙権がさらに奪われる事態が顕著になりました。このような状況から、公民権運動が勃興し、1965年の投票権法制定につながったのです。

公民権運動の影響

公民権運動の影響によって国民が投票権問題に注目するようになり、特に1950年代後半から1960年代にかけて、アフリカ系アメリカ人有権者の登録が著しく増加しました。また、記憶に新しい「血の日曜日」と呼ばれる事件では、アラバマ州セルマでの投票権獲得を訴えたデモが、州兵や警官との衝突を引き起こし、全国的な注目を集めました。このデモは、ジョンソン大統領が投票権法の法制化に踏み切るきっかけとなりました。

法案の成立プロセス

1965年の投票権法は、両院での議論と多数の改正を経た上で成立しました。上院では、民主党と共和党からのトリプルグループが法案を推進し、結局、圧倒的な賛成票で可決されました。続いて下院でも同様に賛成多数で法案が通過し、最終的には大統領の署名を受けて法律として成立しました。この法律が設立された結果、アフリカ系アメリカ人を含む多くの人種的少数者の民主的参加が進みました。

その後の改正

投票権法は、1970年、1982年、2006年に大きな改正を受けており、これらは投票権を守るための特殊条項を維持しつつ、新たな課題に対応するために内容を拡充しています。特に、言語的少数者に対する配慮が強化され、選挙に関する資料が様々な言語で提供されるよう法的に規定されています。

現代の影響

投票権法の施行以降、アフリカ系アメリカ人や他の人種的少数者の有権者登録、選挙参加率は劇的に変化し、特に南部諸州での登録率が高まる結果となりました。これにより、選挙における政治地図が変化し、少数者の意見やニーズが反映される機会が増えました。投票権法は、今日に至っても合衆国における投票権保護の重要な柱であり続けています。

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