抱上

抱上（だきあげ）とは

柔道の投技の一つで、腰技に分類される「抱上（だきあげ）」は、相手を肩の高さまで担ぎ上げる技です。しかし、試合で有効な技とは見なされていません。

別名として、持上落（もちあげおとし）、抱落（だきおとし）、いだきあげ、もちあげ、とも呼ばれます。

概要

相手の自由を奪い、担ぎ上げれば、そのまま畳に叩きつけることで一本となる可能性がありました。しかし、実際には後頭部を畳に打ち付ける危険性が高く、重大な怪我や後遺症、最悪の場合は死亡事故につながる恐れがありました。

そのため、安全面を考慮し、抱上は一本と見なされるようになりました。しかし、相手を巧みに担ぎ上げているかの判断が難しく、曖昧になったため、一本ではなく「待て」が宣告されるようになり、試合では有効な技と見なされなくなりました。

歴史

1924年: 武徳会柔道試合審判規定に抱上に関する最初の条文が登場。相手を水平に高く持ち上げた場合、審判の判断で投げ落とすのを止めさせ、持ち上げた側を勝者とする。
1925年: 講道館柔道試合審判規定にも同様の条文が追加。
1941年: 講道館柔道乱取試合審判規定が改正され、相手が仰向けの場合は体勢を問わず、投げ落とすことが禁止される。
1951年: 講道館審判規定で、持ち上げる高さの基準が「おおよそ肩の高さ」に改正。
1981年: IJF（国際柔道連盟）ルールで、抱上ではスコアが取れなくなる。
1982年: 担ぎ上げた状態を指す名称として「抱上」が制定され、講道館柔道の技名称として腰技に分類される。
1985年: 講道館審判規定から抱上が削除される。
2017年: 講道館柔道の技名称からも削除される。

類似の技

柔道家の川石酒造之助の書籍には、相手をおんぶのように背負う技や、抱上と同様に相手を投げない投げ技である背負上（せおいあげ）が紹介されています。背負上は、抱上げとは異なり、スコアが取れた時期はありません。

反則行為

抱上でスコアが取れなくなった後も、抱上から相手を畳に叩きつける行為は反則です。また、背負上から相手を制して後方に倒れ込む行為も反則となります。

講道館ルール: 警告または反則負け
国際柔道連盟ルール: 反則負けおよび失格
* ブラジリアン柔術: 抱上から相手を叩きつける行為は反則負け (Slam)

名称に関する考察

まだこの技の正式名称がなかった時期に、柔道家の大滝忠夫は書籍『柔道十講』の中で、名称は技の全体を表していないとして、「抱上」よりも「抱落」とすべきだと述べています。

その他

後腰の変化抱落という似た名前の技がありますが、抱上とは異なる技です。

抱上は、その危険性から試合で有効な技とは見なされなくなりましたが、柔道の歴史や安全対策を考える上で重要な要素の一つと言えるでしょう。

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