拐帯行

小説『拐帯行』について

概要

『拐帯行』（かいたいこう）は、日本の著名な作家、松本清張による短編小説です。1958年2月に雑誌『日本』に初めて掲載され、その後1959年に短編集『危険な斜面』の一篇として出版されました。この作品は、東京創元社から刊行され、多くの読者に親しまれています。また、751959年と1988年にはテレビドラマとしても制作されたことで、さらにその知名度を高めました。

あらすじ

物語は、主人公の森村隆志が会社の資金を持ち出すところから始まります。彼は、西池久美子と共に博多行きの特急「さちかぜ」に乗り込み、九州への旅に出発します。この旅は、彼にとって死の地点を求めるものであり、運命の決断を下す瞬間となるのです。隆志と久美子は、自らの過去の不幸から解放されることを望み、どちらかと言えば生きる希望を失っているように見受けられます。

彼らは、もう死ぬしかないと思い込む一方で、最後の瞬間に贅沢を味わいたいという欲望も抱えています。物語は、彼らが熱海駅に到着した際に、斜め向かいの席に座っている中年の夫婦との出会いが一つの転機となる様子を描いています。この夫婦は、安定した生活を送り、幸福そうに見えることから隆志は強い羨望を抱きます。この瞬間、彼は久美子との関係に微妙な距離感を感じ、彼の心が次第に変わり始めるのです。

隆志は、彼らの平穏な日常と自らの混沌とした運命の間に引き裂かれていき、心の葛藤が深まっていきます。物語は、彼の心が明るい希望を見出していく過程や、失われた幸せへの思いが彼の行動にどのように影響を与えるのかを暗示的に描き出しています。

テレビドラマ化

1959年版

『拐帯行』は、1959年10月22日に日本テレビ系列で放映されました。この版は「木曜ワイドアワー」枠で放送され、多くの視聴者に衝撃を与えました。キャストには高橋昌也、悠木圭子、幸田宗丸、折原啓子などが参加し、脚本は若杉光夫が担当しました。

1988年版

1988年9月19日に放送されたこのバージョンは、関西テレビ制作でフジテレビ系列の「月曜サスペンス」枠で放映されました。この作品では、銀行の資金を持ち逃げした隆志が大阪港からフェリーで韓国の釜山へ向かうという設定が採用され、視聴率は11.7%という結果を残しました。キャストには石橋保や渡辺典子、南田洋子などが出演し、脚本は冨川元文が担当しました。

2021年版

2021年1月7日に放送されたドラマスペシャル版は、テレビ朝日系列で放送され、松本清張の作品「黒革の手帖」の続編として新たにアレンジされました。

『拐帯行』は、その深い心理描写と緊張感のあるストーリー展開が評価され、今なお多くの人々に愛され続けています。

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