拝一刀

拝一刀

拝 一刀（おがみ いっとう）は、劇画『子連れ狼』、およびそれを原作とした映像作品に登場する架空の人物であり、物語の主人公です。その名前は、一匹の狼を意味する「狼一頭（おおかみいっとう）」に由来するとされています。

キャラクター背景

拝家は、織田信長に仕えた武将・拝郷家嘉を祖とし、一刀は家嘉の血を引く子孫にあたります。家紋は「丸に対い弓文字」であり、テレビドラマ版では「丸に橘」が用いられました。姓の「拝」は、拝郷の「郷」が武士にとって縁起の悪い「背後」に通じるため、それを避けて改めたものと伝えられています。

一刀は、江戸幕府の公儀介錯人であり、剣術流派・水鴎流の達人でした。愛刀である同田貫を巧みに操る剣豪でしたが、公儀介錯人の地位を巡る柳生一族との対立によって、妻・薊をはじめとする一族を、愛児・大五郎を除いて皆殺しにされてしまいます。さらに、裏柳生の総帥・柳生烈堂の策略によって、将軍家への謀反の疑いをかけられ、拝家は断絶に追い込まれ、一刀自身も大五郎とともに切腹を命じられます。

しかし、一刀は大五郎を連れて江戸を脱出。この時、一刀は27歳でした。柳生一門への復讐を誓い、大五郎を箱車（乳母車）に乗せ、「子を貸し腕貸しつかまつる」と大書した旗を箱車に掲げ、一殺五百両（ただし、元禄小判の価値低下により実質的な報酬は減少）の刺客として全国を流浪します。その風貌から、いつしか「子連れ狼」として人々の間で噂されるようになりました。

流浪の道中、一刀は依頼主からの依頼で標的を殺傷する一方で、拝一族の抹殺と自身の陰謀の隠蔽を図る烈堂が放った柳生一門の剣客や、配下の黒鍬衆、「草」と呼ばれる密偵たちと激しい戦いを繰り広げます。重傷を負ったり、病に倒れて大五郎と離れ離れになったりする苦難を乗り越え、一刀は彼らを打ち破り、烈堂失脚の証となる柳生封廻状を手に入れ、大五郎を連れて数年ぶりに江戸へと戻ります。

江戸に戻った一刀は、幕府の実権掌握を狙う阿部頼母の妨害を退け、八丁河岸で烈堂との激しい決闘に挑みます。その様子は、全国の武士の棟梁たる将軍に、最大級の敬意を表させるほどでした。しかし、決闘前日に「草」の生き残りたちの襲撃を受け、愛刀・同田貫を折られ、重傷を負っていた一刀は、ついに力尽きてしまいます。

刺客として得た報酬は莫大な金額に上りましたが、その大半は旧知の竹細工師・今戸の竹阿弥の元に送金され、柳生一門との戦いに備えて大五郎に買い与えた新兵器・投擲雷の購入資金に充てられました。ただし、第2作『新・子連れ狼』では、拝一刀の同田貫の鞘の内側に「遺産」の隠し場所が記されており、刺客業で稼いだ金の一部は別の場所に蓄えられていた可能性も示唆されています。

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