拡散に対する安全保障構想

拡散に対する安全保障構想（PSI）

拡散に対する安全保障構想、いわゆるProliferation Security Initiative（PSI）は、2003年にアメリカ合衆国によって策定された、新たな国際的な安全保障の枠組みです。この構想は、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散を防ぐことを目的としており、日本では「大量破壊兵器拡散防止構想」としても知られています。

背景

この構想の発表背景には、2002年12月に発生した北朝鮮からイエメンへのスカッドミサイル輸出事件があります。この際、該当の貨物船はスペイン軍によって臨検されたものの、国際法に基づくミサイルの押収が困難であったため、輸出は続行されてしまいました。この出来事は、当時の国際社会に大きな警鐘を鳴らし、大量破壊兵器が容易に他国へと拡散する危険性を浮き彫りにしました。

アメリカ合衆国は、このような拡散を防ぐためには、同盟国との連携が不可欠だと認識しました。その結果、2003年5月31日にPSIが提案され、以降国際的な協力を基盤に行動を始めることになりました。

構想の目的と原則

PSIの主な目的は、大量破壊兵器やそれを運搬するための弾道ミサイルの拡散を阻止することです。このため、各国は連携し、関連物質や技術の移転を防止する手段を講じることが求められます。具体的には、軍・警察・海上保安庁・税関・情報機関などが情報を共有し、阻止行動を実施しながら事前に拡散の兆候を察知していくことが重要です。

2003年6月には、第1回総会が開かれ、その後の9月に「阻止原則宣言」がまとめられました。この宣言は、PSIに参加する国々が守るべき基本的方針を示すもので、明確なルールの枠組みを設けることで、より効果的な協力体制を築いていくことを目指しています。

実際の取り組み

PSIの取り組みは、物資の移送を管理するための臨検訓練という形でも実施されています。最初の多国籍実働阻止訓練は2003年9月にオーストラリアで行われ、その後も定期的に各地で活動が行われています。例えば、2004年には日本が主催した訓練が行われ、各国からの参加者が集まり情報交換や実践的な演習が実施されました。

PSIの発足当初は、11ヶ国の賛同を得てスタートしましたが、2017年時点では104ヶ国以上が賛同しています。このように、参加国が増えることで、国際的なネットワークが強化され、それぞれの国が持つ資源や情報を最大限に活用できる環境が整いつつあります。

結論

拡散に対する安全保障構想は、大量破壊兵器の拡散防止に向けた国際的な安全保障の枠組みを提示する重要な試みです。国際社会が協力し、効果的に危険を未然に防ぐためには、このような取り組みが不可欠であると言えるでしょう。

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