指比

指比：人差し指と薬指の長さの比率が示すもの

指比、特に人差し指と薬指の長さの比率（2D:4D比）は、近年注目を集めている身体指標です。この比率は、手のひら側のMP関節（指の付け根の関節）の中点から指先までの長さを測定し、人差し指の長さを薬指の長さで割ることで算出されます。人差し指が長いと1より大きく、薬指が長いと1より小さくなります。

指比の測定方法

正確な測定には、一定の基準が必要です。従来は手のひら側のMP関節の中点から指先までの長さを測ることが一般的でしたが、近年では手の甲側を用いて指を90度曲げた状態での測定方法も用いられています。研究によっては、手の甲側の測定の方が骨の長さをより正確に反映するとされています。また、手のひらの関節のしわの位置も手のひら側の指比に影響を与えることが示されています。

指比とホルモン

2D:4D比は、胎児期の性ホルモン、特にアンドロゲン（テストステロンなど）とエストロゲンへの曝露量を反映していると考えられています。一般的に、2D:4D比が低いほど出生前アンドロゲン曝露量が高かったことを示唆します。しかし、テストステロン単独ではなく、テストステロンとエストロゲンの比率（T:O比）も関連しているという研究もあります。

性差と指比

2D:4D比には性差があり、男性は女性よりも一般的に薬指が長く、2D:4D比が低くなります。この性差は、手のひら側で顕著に見られますが、手の甲側では小[[指]]を含む指比に強い性差が現れる傾向があります。

指比と様々な形質・特性との相関関係

多くの研究により、2D:4D比は様々な身体的・行動的特性と相関関係を持つことが示唆されています。その相関関係には以下のようなものがあります。

身体的特性: 顔面形状、体格、骨格構造など
行動特性: 空間認識能力、攻撃性、リスク選好性など
健康: 心血管疾患リスク、特定の癌リスクなど
性的指向: 女性では、高い指比が男性的な男性への性的嗜好と関連付けられる傾向があります。男性では、同性愛との関連性が示唆されていますが、研究結果にはばらつきがあり、結論は出ていません。

指比の発生要因

指比がなぜ出生前ホルモンレベルに影響されるのかは、完全に解明されていません。しかし、指の発達に影響するホメオティック遺伝子や、骨成長における性ホルモンの直接的な影響などが関与している可能性が考えられています。また、右手と左手の指比に差があることや、その差が関節のしわの位置に関係している可能性なども示唆されています。

指比の分布と民族差

2D:4D比の平均値は、民族や地域によって差があることが報告されています。例えば、東アジア系の人々では低い値を示す傾向があり、欧米系の人々では高い値を示す傾向があります。この差は遺伝的要因や環境要因（例えば、太陽光への曝露など）が複合的に影響していると考えられています。

研究史

人差し指と薬指の長さの性差は、19世紀後半から指摘されていましたが、本格的な研究が始まったのは比較的最近です。1983年のグレン・ウィルソンの研究を契機に、世界中で多くの研究が行われ、指比と様々な形質との関連性が明らかにされつつあります。

まとめ

指比、特に2D:4D比は、胎児期の性ホルモン曝露を反映する可能性のある指標であり、様々な身体的・行動的特性と関連付けられています。しかし、そのメカニズムは完全に解明されているわけではなく、今後の研究が待たれます。また、民族差や個体差も考慮する必要があります。

参考文献

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