捨てネズミ

トムとジェリー『捨てネズミ』：ミルクを巡る三つ巴の攻防と、ジェリーの怒り

1946年5月18日公開の『捨てネズミ』(The Milky Waif)は、人気アニメーションシリーズ『トムとジェリー』の一作品です。本作は、シリーズに新たなキャラクター、ニブルスを登場させる、重要な作品となっています。

物語は、ジェリーが物音で目を覚ましたことから始まります。家の玄関先には、一枚の置き手紙とともに、小さなネズミの子、ニブルスが捨てられていたのです。ジェリーは、その小さな生き物をかわいそうに思い、世話を始めることを決意します。

しかし、ミルクを手に入れるためには、トムという大きな障害が立ちはだかります。トムは、自分のミルクをジェリーとニブルスに横取りされることに激怒しており、彼らを執拗に追いかけ回します。ジェリーは知恵と機転を駆使してトムをかわしますが、トムは容赦なくジェリーを瓶の中に閉じ込めてしまいます。

一方、幼いニブルスは、トムを全く恐れることなく、その行動は予測不能で、ジェリーをハラハラさせます。トムは孤立したニブルスをハエ叩きで攻撃し、ニブルスの小さな尻は真っ赤に腫れ上がってしまいます。

このトムの残酷な行為を見たジェリーは、怒りを爆発させます。これまで見たことのないような激しい咆哮とともに、トムに襲いかかります。ジェリーは、驚異的な力とスピードでトムのしっぽを掴み、容赦なく叩きのめします。

トムはジェリーに完膚なきまでに打ち負かされ、降参せざるを得ません。そして、ジェリーの監視の下、ニブルスにミルクを与える「看護婦」という屈辱的な役割を強いられるのです。ミルクを巡る三つ巴の戦いは、ジェリーの圧倒的な勝利で幕を閉じます。

本作の見どころは、なんといってもジェリーの怒りの爆発です。普段は機転と知略でトムに対抗するジェリーが、ニブルスへの暴力に激しい怒りを露わにする姿は、視聴者に強い印象を与えます。また、ニブルスの初登場という点も重要です。この作品でニブルスは、トムとジェリーの物語に新たな風を吹き込みました。

さらに、本作は、様々なバージョンの存在も知られています。DVD版では、ジェリーとニブルスが黒人に扮してトムから逃れるシーンがカットされているほか、1965年頃にアメリカのCBSで放送されたバージョンでは、いくつかのシーンが編集されています。これらの違いを比較検討することで、作品の歴史や制作背景をより深く理解することができます。

『捨てネズミ』は、ミルクを巡るコミカルな追いかけっこだけでなく、ジェリーの怒りやニブルスの無邪気さ、そしてトムの悪行など、様々な要素が複雑に絡み合った、奥深い作品となっています。トムとジェリーシリーズを代表する名作の一つとして、今後も多くの人々に愛され続けることでしょう。

登場キャラクター

トム: ジェリーとニブルスに自分のミルクを奪われ、激怒する猫。ジェリーを監禁し、ニブルスをハエ叩きで攻撃するも、ジェリーの怒りを買い、最後はニブルスの世話係を強いられる。
ジェリー: 捨てられていたニブルスの世話を引き受け、ミルクを巡りトムと対決するネズミ。トムの蛮行に激怒し、彼を徹底的に懲らしめる。
* ニブルス: ジェリー宅の前に捨てられていた、幼くて無邪気なネズミ。常に空腹で、ミルクを欲しがっている。トムに攻撃されるも、ジェリーに助けられる。

備考

本作はニブルスの初登場作品であり、様々なカット版が存在することで知られています。これらのバリエーションを比較することで、作品の歴史や、当時の社会情勢などを探ることができるでしょう。

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