排水トラップ

排水トラップとは

排水トラップは、排水設備の配管途中に設置され、下水道からの悪臭やガスが屋内へ侵入するのを防ぐための器具、装置、または構造です。また、害虫やネズミなどが屋内に侵入するのを防ぐ役割も担っています。

排水管にはほぼ必須の設備ですが、ゴミが溜まりやすくパイプ詰まりの原因になりやすいという側面も持ち合わせています。そのため、清掃のために開閉可能な構造になっていることが多いです。流し台や洗髪台、雨水配管など、固形物が多く流れ込む場所や、ガソリンスタンドなど危険物が流れ出す恐れのある場所では、土砂、生ゴミ、グリス、可燃性液体などを溜めるための阻集器（グリーストラップなど）が設置されます。

日本では、建築物の配水管への排水トラップ設置は、建築基準法施行令129条の2の5により義務付けられています。

排水トラップの構造

排水トラップは、排水経路の途中に水を溜めて、常に水で遮断された状態を保つ構造をしています。この水を「封水（ふうすい）」または「水封（すいふう）」と呼びます。封水によって、下水からの空気や硫化水素などのガス、衛生害虫などが排水管から屋内へ侵入するのを防ぎます。

排水トラップの型式

排水トラップには、様々な型式があります。

管トラップ
洗面器などの排水管をS字型などに曲げ、水が溜まるようにしたものです。S字型に曲がり床に抜けるものをSトラップ、壁に水平に抜けるものをPトラップ、出入口ともに水平なものをUトラップと呼びます。
管トラップは、小型で済む点や、水封部が排水によって常に洗浄される（自己洗浄作用）点が長所です。しかし、Sトラップは自己サイフォン現象や毛細管現象が発生しやすい、Uトラップは底部に沈殿物が溜まりやすい、管トラップ自体が破封しやすいなどの短所があります。
アメリカ合衆国の一部地域では、破封の可能性が高いSトラップの設置は禁止されています。
衛生器具作りつけトラップ
水洗式の便器などに用いられる、サイフォン式水封トラップです。
ベルトラップ（椀トラップ）
お椀を伏せたような形状のトラップです。水封部の水量が少なく破封しやすいという欠点があります。また、椀部が容易に取り外せる製品が多く、取り外すとトラップとしての機能が失われ、悪臭やガスが逆流してくるため注意が必要です。台所の流し台や浴室の床などの排水口でよく使用されます。
ドラムトラップ
管路の一部に、排水管径の2.5倍以上のドラム型の水封部を設けたものです。水封部の水量が多く破封しにくいという特徴があります。清掃用流しなどに使用されます。

破封とその原因

破封とは、トラップ内の水が減少し、トラップとしての機能を失う現象です。破封には、以下のような原因が考えられます。

自己サイフォン現象
洗面器などに大量の水をためて使用する際、器具・トラップ・排水管が連続したサイフォンのように働き、内部の水が排水されてしまうことがあります。
吸出し作用
縦管の上部から大量に排水された場合、排水縦管に近い位置にトラップが設置されていると、トラップ内の水が一緒に排水されてしまうことがあります。共同住宅のような建物では、上階の居住者が浴槽の残り湯を流した場合、下階の住居で影響が起こる可能性があります。
はね出し作用
横走り管が短く排水縦管に近い位置にトラップが設置されていると、上部から縦管に大量に排水された場合、排水管内から空気と共にトラップ内の水が室内側に噴出することがあります。
毛細管現象
トラップ内部に繊維状の物体が垂れ下がると、毛細管現象によって内部の水が排水されてしまうことがあります。浴室の床用の排水孔では、皮脂や石鹸などがトラップ内にこびりつきやすく、毛髪が汚れに絡みついて毛細管現象を引き起こし、破封につながることがあります。
蒸発
長期間排水が流れないと、蒸発によって内部の水が減少します。

破封を防ぐためには、以下の対策が有効です。

通気設備を適切に配置する。
器具およびトラップから排水縦管までの横走り配管の管径および距離を適切にする。
* 器具およびトラップの清掃・定期的な排水を行う。

二重トラップの禁止

二重トラップ（ダブルトラップ）とは、1個の器具の配管に直列に2個以上のトラップを接続することです。トラップ間にある空気は行き場を失い、排水の流れを阻害します。この抵抗が排水不良の原因となるため、日本では禁止されています。施工ミスで二重にしてしまうケースが多く、トラップ付き桝（トラップ桝）を設置しているにもかかわらず、途中でトラップをつけてしまうなどの事例が見られます。その場合は、途中のトラップを取り除き、パイプで繋げて改善する必要があります。

特に、汚水桝と排水トラップによる「二重トラップ」は、実際に多いミスなので注意が必要です。

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