探偵宣言 森江春策の事件簿

探偵宣言 森江春策の事件簿

芦辺拓氏による連作短編推理小説『探偵宣言 森江春策の事件簿』は、「森江春策の事件簿シリーズ」の5作目にして初の短編集です。

概要

鮎川哲也賞を受賞した芦辺氏が、複数の雑誌に掲載した「森江春策の事件簿シリーズ」をまとめた作品集。収録されているのは、主人公である森江春策が高校生時代から弁護士に転身するまでの間に遭遇した事件の数々です。書き下ろし1編を含む全7編で構成されており、各作品は独立した物語として楽しめます。

作品集として刊行するにあたり、芦辺氏は短編集全体を貫く仕掛けを施しました。各作品の印象をより強烈にするため、書き下ろし作品を効果的に配置し、作品全体に統一感を与えています。この工夫が芦辺氏に「行き過ぎた技巧派」というキャッチコピーをもたらしました。

巻末解説は推理小説研究家の村川真一氏が担当。シリーズ外の作品との関連性や、共通の登場人物などについて詳細に解説しており、芦辺作品の世界観をより深く理解することができます。

また、一部の作品は『サスペリアミステリー』（秋田書店）にて漫画化もされています。

各話概要

殺人喜劇の時計塔―森江春策、初期の事件
交通機関のストで休校となった学校で、他校生が殺害される事件が発生。演劇クラブの公演準備で登校していた高校生時代の森江春策が、卓越した推理力を発揮し、事件の真相に迫ります。

殺人喜劇の不思議町―森江春策、大学時代の事件
あてのない旅の途中、夜行列車に乗り遅れた大学生の森江は、立ち寄った寂れた町の喫茶店で殺人事件に遭遇。アンティークのマッチロック銃が凶器として使われた事件の真相を解き明かします。

殺人喜劇の鳥人伝説―森江春策、記者時代の事件I
地方支局に飛ばされた新聞記者の森江は、弁護士の九鬼と共に《山上ロッジ》へ向かう途中、送迎バスの事故現場に遭遇。事故死した運転手の謎の叫び声と、空を飛ぶ人間を見たという宿泊客の証言から、事件の真相を探ります。

殺人喜劇の迷い家伝説―森江春策、記者時代の事件II
転勤先で赤沢真紀と再会した森江は、山の中腹から消えた洋館に関する奇妙な話を聞きます。調査に乗り出した森江は、洋館があった場所に捨てられた物置から、無残な死体を発見。消えた洋館と殺人事件の謎に挑みます。

殺人喜劇のXY―森江春策、転身前後の事件
コーヒーの出前中に殺人事件の現場に遭遇した森江。被害者は「XY」というダイイング・メッセージを残していました。森江は、複雑に絡み合った人間関係の中から、真犯人を突き止めようと奔走します。

殺人喜劇のC6H5NO2―森江春策、余暇の事件
毒入りチョコレートによって引き起こされた殺人事件。推理作家の路地谷が企画した真相当てコンテストに、森江も参加することに。各界の著名人が集まる中、森江は事件の真相を解き明かせるのか。

殺人喜劇の森江春策―森江春策、最近の事件
弁護士となった森江の事務所で、依頼人が殺害される事件が発生。同じ頃、近くのホテルでも同様の事件が起きていました。2つの事件の関連性を探る森江は、意外な真相にたどり着きます。

主な登場人物

各話に登場する個性豊かなキャラクターたちが、物語をさらに彩ります。

森江 春策（もりえ しゅんさく）
本作の主人公。卓越した推理力を持つ。高校生時代から様々な事件に巻き込まれ、その才能を発揮していく。

九鬼 麟一（くき りんいち）
弁護士。森江とは旧知の仲であり、事件を通じて協力関係を築く。

シリーズについて

「森江春策の事件簿シリーズ」は、芦辺拓氏の代表作の一つであり、ユーモアと本格ミステリーが融合した独特の世界観が魅力です。本作は、シリーズ初の短編集であり、森江春策の原点とも言える作品群を楽しむことができます。

もう一度検索