控訴院 (イングランド・ウェールズ)

控訴院について

控訴院（こうそいん、英語: The Court of Appeal）は、イギリスにおけるイングランドとウェールズの司法制度で、最高裁判所に次ぐ重要な上級裁判所です。控訴院は、民事部と刑事部という二つの部門に分かれており、それぞれ異なる裁判官が統括しています。民事部では記録長官（Master of the Rolls）が責任を持ち、刑事部はイングランド・ウェールズ首席判事（Lord Chief Justice）が統括しています。また、多数の裁判官が集結する控訴院裁判官（Lords Justice of Appeal）も存在し、彼らは終身任期で活動します。

上訴の手続き

控訴院は、高等法院や国王裁判所からの上訴事件を取り扱います。なお、他の法院からも上訴が可能ですが、下級裁判所からの控訴や控訴院からの再上訴には許可が必要です。控訴院での審理は通常、三人の裁判官による合議体が行い、多数決で判断を下しますが、上訴許可の申立ては個別の裁判官によっても行われることがあります。

控訴院に持ち込まれる事件は、最高裁判所よりも多くなることが一般的です。そのため、記録長官はイングランドで非常に影響力のある裁判官とされています。特に、デニング卿（Lord Denning）はこの地位を務めた期間に多くの重要な判決を下し、コモン・ローの発展に寄与したことで知られています。

民事部の役割

民事部は記録長官のもと、高等法院や州裁判所からの上訴に加え、特定の審判委員会からの上訴も審理します。具体的には雇用上訴審判委員会、土地審判委員会、亡命および移民審判委員会の判断に対する上訴を含みます。民事部は1875年に創設され、さまざまな上訴管轄権が統合されました。上訴に対して控訴院または最高裁判所の許可が必要です。

刑事部の機能

一方、刑事部は特に国王裁判所での有罪判決や量刑に対する上訴を扱います。これは、被告による公式起訴後の判決や、法務長官が付託する事件などが対象です。かつては三つの理由に基づく上訴が認められていましたが、現在は有罪が覆される可能性が唯一の理由とされています。

控訴院は、証人や証拠を再度召喚する権限を持つため、過去の事件においても多くの証人を呼び出すことができます。他国では無条件の上訴権が保証されていることが多いものの、イングランド・ウェールズではこのような権利は存在しません。

歴史的な背景

控訴院の刑事部は1848年に設立された指定刑事事件裁判所の後継です。その後、1907年には刑事控訴院が創設され、ここで被告人に上訴権が与えられました。そして、1966年に現在の控訴院刑事部へと改組されました。

再上訴に関しては、控訴院刑事部から最高裁判所への上訴が可能ですが、必ず控訴院及び最高裁判所の許可が必要です。このプロセスにより、控訴院は上訴事件をコントロールする役割も担っています。

参考文献

Gavin Drewry, Louis Blom-Cooper, Charles Blake, _The Court of Appeal_ (Hart Publishing 2007) ISBN 1-84113-387-6
清野憲一「英国刑事法務事情」刑事法ジャーナル（成文堂）

控訴院に関する詳細は、公式ウェブサイトや民事部、刑事部のホームページを訪れることで得ることができます。

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