摩羅街

摩羅街（ラスカーロー、Lascar Row）は、香港の歴史と文化が色濃く残る上環地区に位置する、独特な魅力を持つ通りです。この通りは、骨董品店が軒を連ねることで知られ、その一方で「キャット・ストリート（Cat Street、猫街）」という通称でも親しまれています。この通称は、露店で販売される品物が時に盗品や出所不明なものが含まれていたことに由来し、「鼠の品物」と揶揄されたことが背景にあります。露店でしゃがんで品物を吟味する客の姿が、まるで鼠を狙う猫のように見えたことから、この愛称が定着しました。

摩羅街は、皇后大道西（Queen's Road West）と荷李活道（Hollywood Road）という二つの主要道路の間に位置し、これらの道路と平行に走っています。この通りを東西に分けるように交差する楽古道が、摩羅上街（Upper Lascar Row）と摩羅下街（Lower Lascar Row）を区切っています。さらに、摩羅上街の東端は、急な階段が特徴的な楼梯街（Ladder Street）へと繋がっており、この地域独特の地形を感じさせます。

摩羅街の歴史は、香港が開港した初期に遡ります。当時、多くのインド人水夫や兵士がこの場所で商売をしており、香港の人々は彼らを「摩羅差」と呼んでいました。「摩羅」とは、シーク教を信仰するインド人やパキスタン人が頭に巻いているターバンを指す言葉であり、この地域で活動していた人々から、通りの名が「摩羅街」と名付けられるようになりました。また、英語名の「Lascar Row」は、この地域に頻繁に訪れていた東インド諸島の水夫「Lascar」の無法な振る舞いが由来とされています。かつて、この通りにはインド人の警察官のための寄宿舎も存在していました。

また、日本では「摩羅」という言葉が男性の陰茎を指す俗語としても知られているため、日本人観光客の間では、摩羅街を「チンポコ・ストリート」と呼ぶこともあります。これは、現地の歴史や文化的な背景を知らない、または異なる解釈から生まれた愛称と言えるでしょう。

摩羅街は、歴史的な背景と異文化が交錯する独特の雰囲気を持っており、香港を訪れる人々にとっては、その歴史的背景や多文化が共存する独特の雰囲気を体感できる場所として人気があります。骨董品や古美術品、雑貨を探すだけでなく、香港の歴史と文化を感じることができる魅力的な観光スポットです。

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