擬任郡司

擬任郡司について

擬任郡司（ぎにんぐんじ）とは、古代日本の律令制において特異な地位を持つ官職です。この職は、正規の郡司である正任郡司（しょうにんぐんじ）が不在の際、国司が中央政府の許可なく候補者にその職務を委任することで生まれました。擬任という名称が示す通り、正式な任命ではないものの、実務を行う立場に置かれたのが特徴です。

歴史的背景

歴史的には、擬任郡司は、国司が新しい郡司の任用手続きを完了するまでの間、職務を代行するために設けられた職でした。このような状況は、正任郡司が空席の場合に必要不可欠でしたが、実際には昇任によって任命された者を「転擬郡司（てんぎぐんじ）」、新規に任命された者を「新擬郡司（しんぎぐんじ）」と区別して呼ぶことがありました。

さらに、正任郡司およびその補充のための擬任郡司が定員に達していない場合に設置される擬任郡司は「副擬郡司（ふくぎぐんじ）」と呼ばれます。この副擬郡司は当初は禁じられていましたが、国司は新興の豪族を取り込むために次第にこの制度を拡大しました。特に812年（弘仁3年）には、郡司の任免権が国司に移行し、中央政府はただそれを確認するだけの立場となったため、副擬郡司の設置が認められるようになりました。

制度の変化と影響

822年（弘仁13年）には、郡司に任命される際に擬任郡司として一定期間その職務を務めさせ、その適性を判断する流れが確立されました。これにより、擬任郡司が恒常化し、副擬郡司が公然と認められるようになりました。制度の変更は、当時の社会情勢や新興層の台頭とも関連していました。既存の譜第郡司が権威を失い、崩壊していく中、新興豪族に役割を担わせることで、在地の把握を目的とした動きがあったわけです。

擬任郡司は、10世紀まで制度として存在し続けたと言われています。この時期は、郡司制度そのものが衰退期に入ったことも影響しています。

参考文献

この項目に関する詳細情報は、山口英男による『日本史大事典 2』（平凡社、1993年）に記載されています。

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