支承

橋梁の要、支承（ししょう）とは

橋梁において、上部構造（主桁・主構）と下部構造（橋台や橋脚）の間に設置され、橋の安全と機能維持に不可欠な役割を果たす部材、それが支承です。別名「沓（くつ、シュー、shoe）」とも呼ばれます。

支承の役割：変形吸収と荷重伝達

橋梁は、温度変化による伸縮や地震など、様々な影響を受けます。これらの影響を緩和し、橋全体の構造を守るために、上部構造と下部構造は直接固定せず、支承を介して連結するのが一般的です。

支承は、上部構造の回転や伸縮といった変形を吸収し、その上で、上部構造の荷重を安全に下部構造へと伝達するという、二つの重要な役割を担っています。

近年、橋梁の大型化や耐震基準の強化に伴い、支承にかかるコストが増大しています。総工事費の30%を占めるケースもあり、支承の設計や選定は、橋梁建設における重要な検討事項となっています。

支承の種類：機能による分類

支承は、その機能によっていくつかの種類に分類されます。

固定支承
上部構造の回転変位のみを吸収するタイプです。鉛直方向の荷重に加え、地震などの水平方向の荷重も受け止めます。
図面上では「F (=Fix)」の記号で示されます。
可動支承
上部構造の回転と伸縮の両方を吸収するタイプです。鉛直方向の荷重のみを受け、水平力は作用しません。
図面上では「M (=Move)」の記号で示されます。
水平力分散支承（反力分散支承）
弾性的に固定する支承構造で、地震力を分散する役割を持ちます。
従来の橋梁では、固定支承に地震力が集中し損傷しやすいという課題がありました。そこで、近年では、複数の支承で地震力を分担するこのタイプの支承が広く用いられています。
一般的に積層ゴム支承が用いられ、図面上では「E (=Elastic)」の記号で示されます。
免震支承
水平力分散支承に、地震時の振動を減衰させる機能を加えたものです。
鉛プラグ入り積層ゴム支承や高減衰積層ゴム支承などが代表的です。図面上の記号は水平力分散支承と同様に「E」が用いられます。
剛結
支承ではありませんが、ラーメン橋などで用いられる剛結構造は、支点条件として「R (=Rigid)」と表記されます。

支承は、橋梁の種類や規模、地域の特性などを考慮して、最適なものが選択されます。適切な支承の選定と維持管理は、橋梁の長寿命化と安全性の確保に不可欠です。

機能分離型支承という選択肢

近年では、支承のコスト増大に対応するため、機能分離型支承という新しい選択肢も検討されています。これは、支承の機能を分割し、それぞれに特化した部材を組み合わせることで、コスト削減や性能向上を目指すものです。

支承技術は、日々進化を続けています。より安全で、より経済的な橋梁を実現するために、今後の技術開発に期待が高まります。

参考資料
支承部の基本事項 (PDF) 土木学会

関連項目
橋梁工学

外部リンク
社団法人日本支承協会
* 道路橋支承便覧 日本道路協会 橋梁委員会 (PDF)

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